スケール感で圧倒 「響の会」


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普久原恒勇作曲の「響」を32年ぶりに演奏する「響の会」=10月27日、那覇市の首里城公園

 スイマチの天に響(とよ)むコンサートが10月27日、那覇市の首里城公園首里杜(スイムイ)館芝生広場であった。作曲家・普久原恒勇が1981年に発表し、今年7月に「民族音楽 詩曲 響(とよむ)」(マルフクレコード)としてCD化した器楽曲「響」を、世代をまたいで構成する「響の会」が32年ぶりに演奏。

三絃(さんしん)や箏、笛、太鼓などの伝統的な楽器を駆使し、沖縄の「天地開闢(かいびゃく)」を描く壮大な叙事詩を月夜に響かせた。
 演奏はコンサートミストレス・翁長洋子(ソプラノ箏)の合図で始まる。琉球王朝をイメージした典雅な旋律の前奏曲で導入。天地が分かれるさまを表現した序章は、打楽器の音がとどろく迫力ある曲想を打ち出す。神々に「おもろ」を奉納する第1章を経て、人々の暮らしを照らす太陽と月を描いた第2章と続く。
 イザイホーの唱え「エーファイ」が力強く響く第3章。第4章は三絃合奏による「ゆがふう」などを奏でた。自然の圧倒的な力に翻弄(ほんろう)されながら、人々が豊かな生活や文化を花開かせていくさまを、生き生きとした旋律で映し出す。太鼓が華やかに打ち鳴らされ、神々への祈りをテーマとする終曲「まつり」で厳かに幕を下ろすと、来場者の拍手が演奏者たちを包む。
 沖縄に伝わる伝統的な旋律を西洋音楽に乗せ、伝統の殻を破ってきた普久原。
 多くの演奏機会で伴奏に甘んじてきた、琉球の楽器たちを主役に据えた「響」という試み。それは沖縄のルーツに迫る器楽曲として実を結び、王朝文化の象徴として復元された首里城で演奏されることによって、沖縄の音楽の可能性を示す道標を描き出した。
(宮城隆尋)