辺野古移設工事、立ち入り差し止め求め来春にも提訴


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米ジュゴン訴訟での新たな差し止め請求について、弁護団が約100人の聴衆に報告したシンポジウムの参加者ら=9日、那覇市の沖縄大学

 名護市辺野古沖に生息するジュゴンの保護を求め、米政府を相手に米国で訴訟をしている「沖縄ジュゴン訴訟」の弁護団らが9日、那覇市の沖縄大学でシンポジウム「基地建設を阻止するぞ!~沖縄ジュゴン『自然の権利』訴訟」を開催した。

約100人が集まり、辺野古への新基地建設を阻止するため、米国内法に基づき、日本政府が工事着工に必要な基地内への米軍の立ち入り許可を差し止めるよう求める訴訟を起こすことを決議した。仲井真弘多知事の埋め立てへの判断を待ち、来春にもジュゴン訴訟の中で新たに請求する。
 同訴訟の米国内代理人の「アースジャスティス」のセーラ・バート弁護士は差し止め請求について(1)差し止めなければ取り返しのつかない結果となること(2)金銭などで補償できないこと(3)差し止めにより原告と被告の受ける損害の比較(4)公共の利益を害しないこと―が焦点になると説明した。
 特に(3)、(4)について国防総省が安全保障や外交などを議論に持ち出してくるのは避けられないことを指摘したバート弁護士は「この訴訟はジュゴンのためだけではなく、沖縄の地域や住民を守る目的がある」と力強く訴えた。
 日本環境法律家連盟代表の籠橋隆明弁護士は「あらゆる闘いをしてきた辺野古の運動を力に、人々の平和と自然への願いを結集し、軍事・外交に関わる困難な裁判に立ち向かおう」と呼び掛け、国際自然保護連合(IUCN)や国連などの協力も取り付けて訴訟を継続することを確認した。
 2003年に始まったジュゴン訴訟は08年、米国防総省に米国家歴史保存法(NHPA)の順守を義務付け、ジュゴン保全指針を求める判決が出て事実上勝訴した後、休止していた。辺野古の環境影響評価(アセスメント)や国から県への埋め立て申請が終わったことを重く見た原告団は基地内立ち入りの差し止め請求という新たな旗を掲げ、再び動きだす。