米兵タクシー強盗 米が見舞金を一転拒否


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 2006年に沖縄市で起きたタクシー強盗致傷事件で実刑判決を受けた米兵2人が損害賠償を支払わず、米政府も4年以上見舞金を支払っていなかった問題で、米政府は10月に示談書を提示したが、被害者側が「日本政府への請求権を放棄する」との文言を削除して署名したため、見舞金200万円を支払わないと被害者側に伝えたことが10日までに分かった。

被害者側の弁護士は「米政府と被害者間の示談なのに、なぜ日本政府への請求権の放棄を迫るのか分からない」と話している。
 被害者側代理人の新垣勉弁護士によると、10月17日に米政府から提示された示談書には「日米両政府および加害者への請求権を放棄する」という内容の文言があった。被害者側は、示談の当事者ではない日本政府への請求権を放棄するのは筋が違うと考え「日本政府」の文言を削除して署名した。同30日に沖縄防衛局から、米政府が文言を削除するなら見舞金を支払わない方針だと伝えられた。
 民事訴訟で米兵に支払いが命じられた約2800万円のうち、米政府からの見舞金を差し引いた残額は日本政府が被害者への給与金として支払うことになっている。
 新垣弁護士は「米側が放棄を迫る請求権には何が含まれるかが明確ではない。それを放棄することで給与金を請求できなくなる可能性も警戒している」と話した。また「過去に私が担当した公務外の事件でも、同様の文言を削除して示談し、支払いを受けた事例はある」と指摘した。
 沖縄防衛局は取材に対し「被害者側と米政府との示談書取り交わしの具体的な内容については、あくまでも当事者間の問題であり、回答は差し控えたい」とした。同様の事例の有無も答えなかった。
 被害者と家族は、事件で後遺障害を負ったとして那覇地裁沖縄支部に損害賠償を求めて提訴した。同支部は09年3月、米兵2人に約2800万円の支払いを命じた。米政府は4年以上にわたって見舞金の請求に応じなかったが、ことし10月に賠償額の約7%に当たる約200万円の支払いを提示した。(沖田有吾)