3年ぶり1億円超 那覇市、生活保護費の不正受給


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 那覇市の生活保護費の不正受給額が2012年度は3年ぶりに1億円を突破し、1億1537万円となったことが23日までに分かった。件数は241件で、約半数が働いた収入を報告していなかった。

他に年金や交通事故による補償収入未申告などの理由が続く。意図的に収入を隠した上に、高級車を所有するなど、悪質な事例もあった。那覇市福祉事務所は「悪質な事例には厳正に対処する。刑事事件にもなり得ることだ」と強調し、適正な受給を訴えている。
 那覇市の生活保護費は全国と同様に年々増加し、平均して年間約500世帯増加している。13年度の予算額は初めて200億円を超え、201億1300万円になった。
 増大する保護費には適正運用が求められるが、不正受給は後を絶たない。不正受給件数は07年度が42件となり、不正受給額は2568万円だった。厚労省が生活保護の申告をより厳格に見直したことで、08年度は144件、1億1036万円と急増した。
 中には悪質な事例もあり、市はこれまで刑事告訴も行ってきた。市福祉事務所によると、多子世帯で約50万円の保護費が支給されている夫婦が、就労せずにパチンコ店に入り浸っていた事例もあった。生活保護世帯は原則、車の所有はできない。障がい者として登録されている人が、高級車に乗り市役所に手続きに来る事例などもある。
 不正に生活保護費を受給していたとして、詐欺の罪に問われた判決が17日にも出た。市内に住む無職の40代女性に、那覇地裁は懲役1年6月、執行猶予3年の判決を言い渡した。
 判決によると、女性が08年から09年にかけて虚偽の収入額を申告するなどして、生活保護の差額12万円をだまし取った。裁判官は「虚偽の内容を伝えるなど犯行は悪質。困窮は特段ではないのに、貯蓄するために国民の負担に成り立つ生活保護を不正に受給することは決して認められない」とした。
 女性が反省していることや、医療費を含む生活保護費の不正受給について、3千万円以上の返還義務を負っていることなどを考慮し、執行猶予に付した。
 那覇市は「不正受給は違法行為であるとともに、生活保護行政に対する市民の信頼を揺るがす行為であり許し難い。今後も警察との連携を深め、生活保護行政の適切な運営に取り組む」とのコメントを発表した。市は現在も約9件の告訴事案を抱えているという。
 不正受給した保護費に対して市は返還を求めている。だが、既に使ってしまい返済できなかったり、国外に逃亡したりするなど、徴収できていない事例が多い。12年度の不正受給1億1537万円のうち、徴収できたのは約12・8%の1483万円。不正受給発覚後の徴収の強化も求められている。