音色、旋律、前衛的に 岡田光樹×山内昌也


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東西の音色を調和させ、前衛的な曲想を描き出すバイオリンの岡田光樹(左)、歌三線の山内昌也=19日、浦添市てだこ小ホール

 弦の音色が東洋と西洋の対立、調和の歴史を体現した。ともに県立芸大で指導するバイオリン奏者の岡田光樹、歌三線の山内昌也によるリサイタル「永遠の響き」が19日、浦添市てだこ小ホールであった。

バイオリンと三線、二つの楽器の音色だけで構成したシンプルな演奏会は、欧州で育まれたクラシックと琉球古典音楽の類似点や対照的なさまを、次々と描き出した。古典を追求する者同士のスリリングな対峙(たいじ)は、危うい均衡の上にハイブリッドな旋律を成立させた。
 2人は「かぎやで風節」「踊りこはでさ節」、G・テレマン「幻想曲」第2番とそれぞれの古典で幕を開く。「歌あわせ」と題し、舞踏曲「むんじゅる」から「ムンジュル節」などを山内が三線で演奏し、歌の部分を岡田がバイオリンで奏でる。通常は両者一体で完結する歌三線をあえて分離し、バイオリンと合わせることで独特の調和を描く。岡田は歌に託された恋心を、沖縄に吹く風を思わせる旋律で表現した。
 さらに「ミュージカル・インスタレーション」としてバッハ「シャコンヌ」のバイオリン演奏に合わせて歌三線を即興で合わせる。15世紀スペインの宮廷舞踊のために作られた、三拍子の重く長い曲想に、山内の琉歌が乗る。「歌の響き合いが世界にこだまするように願いを込めた」と琉歌の意味を語る山内。「伊野波節」の一節も交えた。
 最後は沖縄の近代歌曲から「てぃんさぐの花」、生誕130年を迎えた宮良長包の「えんどうの花」を演奏し、「谷茶前節」でにぎやかに締めくくった。中東で生み出された弦楽器が時間をかけて東西に伝わり、それぞれの土地に合った楽器として生まれ変わったバイオリンと三線。そのルーツを感じさせ、歴史を感じさせる2人の調和は、西洋音楽と沖縄の旋律を組み合わせた長包の精神にも通じる、前衛的なリサイタルとなった。(宮城隆尋)