史劇の未来模索 謝名原の乱、若手中心に熱演


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朝林(右、玉城盛義)の前で自害する秀達(神谷武史)=21日、浦添市の国立劇場おきなわ

 国立劇場おきなわの沖縄芝居公演「琉球史劇 謝名原(じゃなばる)の乱」(船越義彰作、幸喜良秀演出)が21、22の両日、浦添市の同劇場であった。1991年の初演時、「新たな沖縄芝居」と評価された作品。配役を若手・中堅に一新して再演し、史劇の未来を模索するような舞台を見せた。

 謝名原家は、朝鮮出兵に対する王府の方針に反対する。国を思う故の進言だったが、逆臣として討伐されることになる。討伐の将に選ばれたのは、謝名原家の長男秀達(神谷武史)に妹真鶴(小嶺和佳子)が嫁ぎ、家族同然に付き合う朝林(玉城盛義)だった。
 精悍(せいかん)な神谷と盛義は史劇が似合う。若い出演者たちは、ベテランの滋味とは異なる、張りのあるせりふ回しを聞かせた。
 圧巻は討伐軍に攻められる場面。敵に囲まれた屋敷内で一族全員が白装束になり、子どもたちが舞う。地謡は仲村逸夫、玉城和樹、仲大千咲、久志大樹。「サーサー節」で散りゆく花のはかなさと美しさを引き立てた。初演は西洋楽器も用いたが、今回は沖縄の楽器のみで臨んだ。
 謝名原家の次男秀敏(宇座仁一)は妻真蒲戸(伊良波さゆき)を自ら手に掛け、朝林はおいの小松金(玉城匠)に引導を渡す。また一つ、また一つと亡きがらが横たわり、舞台は悲劇で満たされていく。秀達が自害した後、「大義んで云(ぃー)せー何(ぬ)うやが」とひとり自問する朝林。忠孝にとどまらない人間描写は「大新城忠勇伝」の豪快さとは別の魅力があった。
 史劇は男性中心になりがちだが、本作は女性の存在感も大きい。謝名原家の嫁たちは強く、母性にあふれる。次女真玉津(花岡尚子)と恋人鶴千代(金城真次)の悲恋も胸を打つ。那覇市文化協会が7日開いた史劇フォーラムで、幸喜は女性が活躍する作品づくりを課題の一つに挙げた。古典的な史劇の継承と、新たな創造が並行して進むことを期待したい。
 その他の出演は普久原明、山城亜矢乃、天願雄一、山城崚称、翁長俊輔、島袋光尋、石川直也、座喜味米子ら。(伊佐尚記)