那覇空港第2滑走路増設 “市最後の海岸”生態系影響も懸念


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
那覇空港滑走路増設基本計画図

 那覇空港の第2滑走路増設で沖縄総合事務局が提出した埋め立て申請を県と那覇港管理組合は9日、承認し、今月にも工事が始まる。埋め立てられる予定の那覇市に残った最後の海岸「大嶺海岸」は200種以上の希少な生物が息づく海だ。

発着便の増加で観光の発展に期待が高まる一方、埋め立てにより潮流が変化し、生態系にも影響が想定される。大嶺海岸の自然を見続けてきた沖縄自然環境ファンクラブの賀数弘さんは「十分な通水性を確保しなければ底質の環境は変わってしまう。環境が変われば、大嶺海岸は生物が多様な場所ではなくなる」と訴える。
 那覇市議会は県の要請を受け、昨年12月20日の本会議で埋め立て承認を賛成多数で可決した。採決は賛成28、反対11。共産、社民、社大が反対した。反対意見には環境悪化、自衛隊基地機能の強化、大津波対策への懸念などがあった。
 市議会での公有水面埋め立て申請の審議で、反対討論に立った湧川朝渉氏(共産)は那覇飛行場の自衛隊との軍民共用について、市議会が民間専有化を全会一致で12回決議したことを挙げ「専有化すれば現有滑走路で十分対応可能だ。嘉手納基地の返還が緊急対応にも早道だ」と訴えた。
 一方、埋め立て承認に賛成する与党からは花城正樹氏(なは民主)が「中核市の那覇市は沖縄の観光と経済を発展する役割がある。滑走路増設は県民が大変望んでいる。環境措置は着実に実施し、県民全体で方向性を示すべきだ」と意見を述べた。
 反対した平良識子氏(社大)は「政府が次期中期防衛計画を示し自衛隊の強化がとても気になる。自衛隊がそのまま強化されるべきでない」と話した。
 市環境保全課は市民を対象に毎年3、4月の大潮に大嶺海岸の観察会を開く。参加者する親子連れからはサンゴやヒトデなど豊かな自然に感嘆の声が上がる。大嶺海岸はアカウミガメの産卵も確認されている。
 日本自然保護協会の亀山章理事長は2013年11月、仲井真弘多県知事に提出した公有水面埋め立てに関する意見の中で、大嶺海岸に希少種が豊富に生息する同海岸を「数少ない良好なサンゴ礁生態系」と評価した。
 沖縄自然環境ファンクラブの賀数さんは「西海岸地区の海草藻場、生物が多様な環境をぜひ残したい。持続可能な開発の見本となるような事業であってほしい」と訴えた。