不発弾の民間磁気探査 補助制度、浸透せず


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糸満市小波蔵で発生した不発弾爆発事故=2009年1月14日

 【糸満】2人の重軽傷者を出した糸満市小波蔵の不発弾爆発事故から14日で5年がたった。この事故をきっかけに不発弾対策が見直され、民間地での事前磁気探査補助などいくつかの制度が設けられた。これらの制度は徐々に認知されてきたが、まだ十分に活用されていないのが実情だ。関係者は「認知度の不足」を課題として挙げ、「もっと制度を活用してほしい」と呼び掛けている。

磁気探査を促す
 同事故は2009年1月14日、市発注工事で重機による掘削作業中に地中の250キロ級不発弾が爆発し、2人が重軽傷を負った。この事故を契機に国は磁気探査調査を促す施策を新たに設けた。公共工事における事前磁気探査の義務化や住宅など民間工事地での事前磁気探査への全額補助、磁気探査研修の実施・機器の無償貸し出し―などがある。

周知不足が課題
 このうち、県から強く要望されていたのが民間工事地の事前磁気探査の全額を補助する「住宅等開発磁気探査支援事業」だ。事業を所管する県によると、初年度の12年度は5件の実績しかなかったが、13年度は4月~12月末で約150件の申請があり、このうち67件を補助した。結果、3発の不発弾を発見した。徐々に認知度は増してきたが、約6億円の予算の執行額は半分にも満たない。
 一方、10年から沖縄不発弾対策協議会が開く不発弾探査機器に関する研修会には、昨年12月末時点で千人余が参加した。受講生は機器の無償貸し出しの権利を得るが、これまで機器を貸し出したことは3回しかない。同協議会の事務局を担う沖縄総合事務局の担当者は「周知不足」を反省点に挙げ、事業の方向性を検討するとした。
 沖縄戦で使用された砲弾は約20万トンとされ、うち1万トンが不発弾として残ったと推定されている。県などによると、陸上だけに限っても1972~2012年度までに約1686トンの不発弾が処理されたが、現在も2千トンを超える不発弾が地中などに眠っているとされる。今でも毎年約900件の不発弾が発見される。県の担当者は「安心・安全のためにぜひ事業を活用してほしい」と呼び掛けた。
 「住宅等開発磁気探査支援事業」への問い合わせは県知事公室防災危機管理課(電話)098(866)2153。磁気探査機器研修に関する問い合わせは沖縄総合事務局(電話)098(866)1908。
(梅田正覚)