那覇市、旧伝統工芸館を取り壊し 運用11年半


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取り壊しが進む旧市伝統工芸館。3月14日までにさら地になる予定だ=2月14日、那覇市当間

 那覇市は現在、旧市伝統工芸館(那覇市当間)の取り壊し作業を行っている。同館は1993年4月に開館したが、2004年11月に工芸館の担ってきた機能が那覇市牧志のてんぶす那覇2階に移転してから、事実上約9年間使われていなかった。

当時を知る関係者からは施設の意義を評価する声がある一方、11年半で終わった運営に「典型的なハコモノ行政で無駄使いだった」と批判の声もある。
 同館は前市政の時に自衛隊基地の一角にあった市有地を活用し、県内初の工芸専門総合展示場のある施設として、市が13億8千万円かけて建設した。来場者は1994年度の9万2670人を最高に減少を続け、2003年度には1万5870人まで激減した。計画当初から立地や駐車場の不足など課題が指摘されていた。利用者の減少もあり、同館を管理運営する市伝統工芸事業協同組合連合会は市からの補助を受けなければ経営が成り立たなくなっていた。
 市管財課によると、移転後の跡地は台風の被害があった際、館の表側は破損した場合は補修したが、目につかない裏手は穴が開いても補修せず、風雨が入る状況になっていた。跡地は発掘物や漂着物の保管場所として利用していたという。警備費などで年間約100万円の維持費がかかっていた。跡地は別の用途での使用が実現せず、那覇空港自動車道小禄道路にかかるため、昨年12月から解体作業が始まっている。
 那覇市と南部国道事務所との売却契約は、土地約2億8千万円、建物は8億6千万円(取り壊し費6900万円を含む)の計11億4千万円だった。
 市商工農水課は同館の価値を「伝統文化の保存、担い手の育成」を上げる。同館が国際通り沿いに移転した現在も市は約1千万円の管理運営費を出して同館を維持している。現在のてんぶす那覇にある市伝統工芸館の博物館には年間5千人、体験教室は約1万1千人が利用している。
 これまでの経緯を知る壺屋焼物博物館の倉成多郎学芸員は「旧館は問題点が多く、うまく機能せず、ハコモノ行政の典型だった。現在は体験教室の利用が多く、対照的だ」と指摘した。