組踊の継承映画化 山城、砂川監督「裏側のドラマ描く」


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「自分の道を目指す人の希望を込めた」と語る山城知佳子(右)、砂川敦志両監督=12日、那覇市の琉球新報社

 神谷武史ら組踊の若手が、伝統を継承していく姿を描いた映画「うんじゅぬ花道」が、第6回沖縄国際映画祭で上映される。山城知佳子、砂川敦志両監督に思いを聞いた。

 ―映画のきっかけは。
 山城 昨年、2人で高嶺剛監督の新作映画に関わった時、(沖縄芝居役者の)北村三郎さん、平良進さんが出演していた。役者が動くと、昔の沖縄の風景、時間がふわっと立ち上がるようで感動した。琉球芸能を勉強しているうちに、若い役者たちを知った。神谷武史さんを追い掛けている中で、息子の武之心君が初舞台を踏んだ。仕事をしながら複数の稽古を掛け持ちして、息子は忙しい父親と一緒にいるために、自分も組踊を始める。親子の日常そのものがドラマだと思った。表の舞台は本物を見てほしいが、映画では裏側を描きたかった。
 ―山城監督は現代美術の映像作品を作ってきた。
 山城 アートは自分のイメージを現実にする作業。全部1人でやる。映画は全然作り方が違い刺激的だった。役者に自由に動いてもらい、それをどうキャッチするかという撮り方にした。本人の役だし、事実を演じる中で演技じゃない部分も出ている。
 砂川 劇映画はコントロールされているが、今回は意図が伝わっていれば、言葉を変えてもいいという芝居をした。僕らにとってチャレンジだった。
 ―冒頭の登場シーンは迫力がある。
 山城 映画は細切れで撮るが、冒頭は長回しにして、舞台の実時間を表現したかった。リハーサル1回、本番1回ですごく緊張した。稽古のシーンも1回きりだったが、そのためリアルな表情が撮れた。
 ―タイトルの意味は。
 山城 映画を見た人が自分の道を見詰め「よし、やっていこう」と思えたらいい。
 砂川 自分の道を目指す人の希望を込めた。僕らも食えない中、別のことをやりながら映画を撮っている。観光PRの映画だが、まず地元の人に芸能を知ってほしい。
 山城 次は沖縄芝居の舞台美術のドキュメンタリーを作ってみたい。
(聞き手 伊佐尚記)
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 「うんじゅぬの花道」は21日午後6時50分に沖縄コンベンションセンターで、23日午後6時50分に桜坂劇場で上映される。