諦めず がんと闘い博士号 70歳川元さん笑顔のゴール


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病と闘いながら博士論文を書き上げた琉大大学院生の川元恵美子さん(左)と妻を支えた夫の紀昭さん=19日、浦添市内

 がんと闘いながら博士論文を提出した琉球大学大学院生の川元恵美子さん(70)=豊見城市=が20日、宜野湾市の沖縄コンベンションセンターで開かれる琉球大学卒業式・同大大学院修了式で博士号を授与され、学びやを巣立つ。大学院生活を振り返り、川元さんは「諦めなければゴールに到達できる」と晴れやかな笑顔で語った。

 2011年に同大大学院人文社会科学研究科の博士後期課程に入学した。哲学を専門とする浜崎盛康教授の下で、がん患者の緩和ケアを研究テーマに選んだ。元看護師として多くの患者の死と向き合ったこと、自身が長年がんと闘い続けてきたことが研究の動機だ。
 約20年前に大腸がん、3年半前には乳がんを患い、在学中の13年1月に大腸がんが再発した。
 在学中、抗がん剤の副作用で吐き気に襲われたり、倒れて救急車で搬送されたりしたこともある。ドクターストップがかかったが、執筆の手を止めなかった。「諦めない」と踏ん張る恵美子さんを教員がサポートし、13万文字に及ぶ博士論文を見事書き上げた。
 がん再発後、恵美子さんの通学に毎日付き添い、見守ったのは夫の紀昭さん(73)だ。妻の体を案じたが、懸命に取り組む姿を見て「『やめろ』と言えなかった」という。ゴールにたどり着いた恵美子さんを「家族の誇り」とたたえる。
 修了式の前日、恵美子さんは「明日は誇らしい日。自分の足で舞台に立てることが何よりもうれしい」と涙を浮かべた。「これからもがんとの闘いは続く。負けずに、この経験を生かして、医療と福祉を志す若者の道しるべになりたい」と瞳を輝かせて語った。(赤嶺玲子)