“親心”両校にエール センバツ、美里工寮母の前嵩さん


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美里工の野球部寮生に囲まれ、笑顔の前嵩邦子さん(中央)=11日、沖縄市泡瀬(普久原裕南撮影)

 第86回選抜高校野球大会は21日、兵庫県西宮市の甲子園球場で開幕した。沖縄尚学と美里工の試合を格別な思いで待つのが、美里工野球部寮で寮母を務める前嵩邦子さんだ。息子の雄基さんは、2005年に沖尚が春夏連続で甲子園に出場した時のエース。ゆかりのある2校が甲子園出場を決めた前嵩さんは「運が良い」と喜び、両校ナインの躍進を心待ちにする。

 前嵩さんの兄が神谷嘉宗監督と古くからの知人で、おいが美里工で野球をするために石垣島から出てきたこともあり、昨年4月から寮母を務める。学校のそばにある寮には、離島など遠隔地に自宅がある部員8人が暮らし、食事のみの1人を加えた計9人分の食事を作る。これまで経験のない仕事に「最初は張り切り過ぎて疲れた」と前嵩さん。調理時間の配分や作る量など試行錯誤を重ねてきた。
 息子の雄基さんは沖尚のエースとして活躍し、現在ヤクルトに所属する比屋根渉選手らと共に05年春には8強入りを果たした。卒業後は社会人野球でプレーした後、今は現役を退いている。沖尚で寮生活を送った雄基さんからは母へ「量より質を考えてあげて」と助言があったという。
 普段は午前2時半に起き、自宅から車で約5分の寮へ向かう。朝食の支度を終えて5時ごろ帰宅し、夕方に再び寮へ戻る。同じような献立が続かないよう工夫し、誕生日やクリスマスには時期に合わせた料理を出す。「季節を感じてほしい」との“親心”からだ。寮長の3年生、西里翔(かける)君は「朝早くからおいしいご飯を作ってくれ、本当にありがたい」と感謝する。
 前嵩さんは沖縄2校のナインに「夢の舞台で堂々と戦い、1勝でも多く勝ってほしい」と声援を送り、県勢同士の決勝がかなえば「飛んでいこうかな」と頬を緩めた。(大城周子)