消費増税、高齢者の生活打撃 老人ホーム、配食値上げ


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消費増税により、県内各地の有料老人ホームが料金値上げを決めた=沖縄市の有料老人ホーム「にへでほーむ」

 目前に迫る消費増税が、高齢者福祉の現場に影を落としている。有料老人ホーム利用料やデイケア利用者の弁当代などは上がり、利用者からはため息がもれる。一方、事業者も介護の質の維持に頭を痛める。医療や介護などの社会保障維持という名目の増税だが、還元の実感も得られぬまま、毎日の負担増が高齢者の生活を直撃しそうだ。

 県内各地の有料老人ホームは消費増税に伴い利用料値上げを決めた。沖縄市大里の有料老人ホーム「にへでほーむ」では4月1日から改定料金を適用する。光熱費を含む管理費や食費などに増税分の3%を上乗せする。利用者1人当たり月1850円(30日間利用)、年間で2万2200円の値上げだ。管理者の山田義史さんは「現在、食費は1食400円。すでにぎりぎりの価格設定だ。介護の質を落とさないためにも値上げせざるを得ない」と苦しい胸の内を語る。
 比較的料金が安い特別養護老人ホームの県内待機者は約5千人と入所が難しく、有料老人ホームを利用せざるを得ないのが実情だ。「にへでほーむ」に入所する96歳の姉に会いに来た70代女性=沖縄市=は「増税で高齢者の生活が楽になる実感は湧かず、むしろ国は弱者を切り捨てるんじゃないかと心配だ」と不安を口にした。
 病後の在宅治療食やデイサービス利用者の弁当などといった配食サービスの現場では、値上げする業者もある一方、見送った法人もある。料金を据え置いた本島南部のある社会福祉法人は約100世帯に宅配する。食材負担が最も大きいが、刻み食など制限食作りの手間も大きい。もともと赤字運営だが、さらなる負担増に頭を痛める。職員は「食材費高騰があっても値段を上げずにやってきた。毎日利用してくれる高齢者が多く、わずかな値上げも大きな負担増になる」と話す。
 「消費税をなくす沖縄の会」代表を務める豊村朝英さん(64)=与那原町=は「もっと国民が怒らなくてはいけない」と増税に異議を唱える。妻茂美さん(65)が利用する宅配の糖尿病制限食(1日3食)はひと月で4750円値上がりし、4万3千円近くと年金生活を直撃する。「生活費を切り詰めるどころでなく、物を買わなくなることだって起こり得る」と心配する。