病越え“2分”熱演へ 内間さん15年ぶり舞台


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 沖縄戦で肉親を失った人々の苦悩と村の混乱を描く演劇集団「創造」の公演「でいご村から」(大城貞俊作、幸喜良秀演出)で、内間安男さん(65)が15年ぶりに舞台復帰する。病に倒れ、後遺症と向き合いながら、再び舞台で演じる日を思い描いてきた。「舞台に立つ以上、中途半端なことはできない」と語り、短い出演時間に役者人生をかける。

 内間さんは1999年の「人を喰(く)った話」に出演した後、脳内出血で倒れ、演劇から遠ざかった。今も半身が不自由だ。「せりふがない役なら、ということで引き受けた。復帰はうれしい。昔の感覚がよみがえってきた」と笑顔を見せる。
 役柄は沖縄戦で心身に深い心の傷を負った「盲目の男」。サングラスをかけ、杖をついて舞台を横切る。出演時間は約2分間。15日、うるま市内であった稽古で熱演した。「短い時間だけど、僕が出ることで、舞台が締まればいいと思う」
 内間さんは近現代史を縦軸に沖縄を取り巻く差別構造を描いた「人類館」の「調教師」役で注目された。作者は昨年亡くなった知念正真さん。「役者として勉強になった。今の僕があるのは『人類館』出演のおかげ」と振り返る。
 「でいご村から」には過去に「人類館」を演じた崎浜茂さん(65)、今秀子さん(66)らも出演する。いずれも数分の出演時間で戦争の苦悩を背負い、人生を狂わされた人物を演じる。演出の幸喜さんは「長い文章の中の接続詞として登場する。その役割は非常に重要だ」と語る。
 戦場に行った恋人を待つ女性を演じる小嶺和佳子さん(44)は「戦争を背景とした演劇への出演にやりがいを感じる。戦争体験を風化させてはならない。戦争を繰り返させぬよう、平和を発信したい」と語った。
 「でいご村から」は20日、うるま市民芸術劇場響ホール、29日、国立劇場おきなわで。いずれも午後6時半開演。

12年ぶりに舞台復帰する内間安男さん=15日、うるま市民芸術劇場響ホール
戦争の苦悩を背負う村人を描く「でいご村」の稽古=15日、うるま市民芸術劇場響ホール