在韓基地元米兵の健康被害認定 県内事例に波及も


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
スティーブ・ハウス氏

 【ワシントン=島袋良太本紙特派員】1978年に在韓米軍基地で枯れ葉剤が入ったドラム缶約250本を上官の命令で埋却し、その作業の結果、健康被害を受けたと2011年に告発し、これを否定する米政府と争っている元米兵に対し、米退役軍人省が「有毒な化学物質への接触」を理由に被害を認定したことが21日までに分かった。

退役軍人省は原因となった物質は「枯れ葉剤ではない」と推定したが、健康被害を招くほどの有害物質による基地汚染があった実態は認めた形だ。米軍が枯れ葉剤を貯蔵・使用したとする証言が相次ぐ沖縄にとっても、注目を集める認定となりそうだ。
 被害認定を受けたスティーブ・ハウス氏(56)=米アリゾナ州=が琉球新報に明らかにした。認定は3月25日付。枯れ葉剤が大量散布されたベトナム戦争に派兵された元米兵でつくる米国ベトナム戦争退役軍人会やハウス氏によると、枯れ葉剤を除く有毒化学物質への接触を理由に、退役軍人省が戦場以外にいた元米兵の健康被害を認定するのは初の事例。
 ハウス氏は「有害物質を違法投棄する不適切な行為と健康被害の関係が認められた点は勝利だ。同じ状況に苦しむ退役軍人の救済にもつながるよう働き掛けていく」と述べた。その上で今回の決定が、60~70年代に米軍が枯れ葉剤を貯蔵・使用したとする証言が相次ぐ沖縄の基地汚染問題や、元沖縄駐留米兵の健康被害の実態解明にも波及する可能性にも期待した。ハウス氏は今年末に来県し、講演することも検討している。
 ハウス氏は11年、韓国の陸軍基地キャンプ・キャロルに枯れ葉剤を埋却したと米テレビ番組で告発した。これを受け、約4億円をかけて米韓合同による同基地の環境調査が行われ、米政府は翌12年、枯れ葉剤の埋却を否定する声明を発表した。
 さらに調査の結果、同基地では枯れ葉剤「エージェント・オレンジ」の主要成分であるダイオキシン「2・4・5―T」が検出された。その後の追加調査では検出されなかった。
 「2・4・5―T」は、昨年夏に沖縄市の米軍基地跡地(現サッカー場)から発掘されたドラム缶の付着物からも検出され、専門家が枯れ葉剤との関連性を指摘している。
 ハウス氏は、枯れ葉剤接触者によくみられる糖尿病や肝臓肥大、皮膚疾患などを患っている。