若手、ベテラン好演 創造「でいご村から」


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サヨ(小嶺和佳子・前列右)をみとる千代(あさと愛子・同左)、喜助(上江洲朝男・後列中央)、よね(座喜味米子・同右)、栄昇(当銘由亮)=20日、うるま市民芸術劇場

 演劇集団創造は20日、うるま市民芸術劇場で「でいご村から」(大城貞俊作、幸喜良秀演出)を上演した。

若い役者とベテラン団員、地域の人々が力を合わせ、沖縄戦で愛する人を失った苦しみや平和への祈りを描いた。創立53周年の創造が、「沖縄の心と身体を復権」しようと初めてうちなーぐちの演劇に挑んだ。
 サヨ(小嶺和佳子)と喜一(天願雄一)はデイゴの下で結婚を約束するが、喜一は戦死する。戦後、サヨは梅吉(仲嶺雄作)と結婚するが、戦争で人が変わった梅吉は暴力を振るう。サヨは喜一の父・喜助(上江洲朝男)の家に逃げ、喜一の帰りを待ち続ける。
 中里友豪、内間安男ら往年の団員も、短い時間ながら戦中戦後の沖縄を象徴する役を演じた。内間が演じたのは「盲目の男」。上空を飛ぶ米軍機の爆音に、声にならない声を上げ、拳を突き上げる。無言の表現が、観客に傷の深さを想像させる。登場する際に背後で悲しい音楽が流れるが、音楽のない方が演技が際立つのではないか。
 サヨは米兵に乱暴され、喜一の名を呼びながら息絶える。長い場面だが、サヨの思いを表現するにはこの長さが必要だったと思う。サヨの祖母・千代を演じたあさと愛子も、自然なうちなーぐちと演技で安定感をもたらした。
 村人はサヨと喜一の「ぐそーぬにーびち(あの世での結婚)」を行う。サヨの龕(がん)を担ぎ客席の間を歩いていく様子は神々しい。舞台から出ることで、終戦直後の物語を現在につなぐ印象も与える。最後に村人たちが「国頭サバクイ」を踊り、民衆の力や平和への祈りを表す。ただ、ぐそーぬにーびちが美しいので、踊りなしで幕を下ろしてもいいかもしれない。
 沖縄現代劇の先駆者である創造が、挑戦する姿勢を持ち続けていることを評価したい。一方で下の世代の演劇人が、伝統芸能と連携した「新たな沖縄現代劇」を目指す動きもある。それぞれが沖縄の今をどう描いていくのか注目したい。
 その他の出演は当銘由亮、座喜味米子、花城清長、仲里智子、崎浜茂、桑江テル子、今秀子ら。うちなーぐち訳は桑江常光。29日午後6時半に国立劇場おきなわでも上演する。問い合わせは創造(電話)090(2392)0804。(伊佐尚記)