サービス付き高齢者住宅、2年で9倍64件


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薬生堂が5月から運営を始めるサービス付き高齢者住宅「すこやかの森ヴィラ北谷」=北谷町伊平

 高齢化社会の進展で高齢者の単身世帯や夫婦だけの世帯が増える中、バリアフリー構造などを備えた「サービス付き高齢者住宅(サ高住)」への関心が県内でも徐々に高まっている。

国が2011年にサ高住の登録制度を開始して以降、県内の登録件数は12年3月末時点で7件だったが、14年3月末時点で64件(全国4555件)に増えた。今後も増加が見込まれる中、関係者は競争激化によるサービスの多様化も見通す。
 賃貸住宅であるサ高住の運用には、県への登録が必要。事業者には安否確認と生活相談サービスを義務付けるほか、1部屋の床面積を原則25平方メートル以上としたことも特徴だ。
 国は14年度予算で、サ高住の供給促進を図る「スマートウェルネス住宅等推進事業」に340億円を盛り込んだ。新築、改築費に最大100万円を助成する。
 沖縄銀行は今月16日に大鏡建設と共催で、サ高住に関心のある事業者向けにセミナーを開いた。沖銀の担当者は「相談は確実に増えている」と話す。運営事業者については「介護などの医療業界と、土地活用を地主に提案する建築や不動産などからの二つのアプローチがある」と解説する。
 「すこやか薬局」を展開する薬正堂(沖縄市)は5月、同社初のサ高住「すこやかの森ヴィラ北谷」を開業する。看護師が年中常駐し、食事提供や機能訓練のサービスもある。家賃や食費などのほか、要介護度に応じて負担額が変動する仕組みだ。
 国立社会保障・人口問題研究所の調べでは、15年の県内の高齢者(65歳以上)の単身・夫婦世帯数は9万2千世帯で、全世帯数の16・8%を占める。10年後の25年には28・0%まで比率が高まる見込みだ。
 地主に土地活用を提案する照正組(与那原町)の担当者は「これまでアパートがメーンだったが、高齢化でサ高住への関心は高い」と話す。ただ「サ高住は部屋の広さや廊下幅が(法律で)決まっており、運営までを見通すと地主とのマッチングは簡単ではない」と述べる。
 一方、法律で義務付けるサービスは生活相談と安否確認のみ。介護経営コンサルティングを手掛けるスターコンサルティンググループ(東京)の糠谷和弘社長は「大阪や名古屋など人口過密地域では既に競争が始まっている。今後沖縄もサービスの差別化が激化するだろう」と見通した。
(長嶺真輝)