沖縄戦 苦悩描く 演劇集団「創造」と市民共演


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多くの市民が出演する「でいご村から」のフィナーレ=20日、うるま市民芸術劇場

 【うるま】沖縄戦で恋人や肉親を失った人々の苦悩を描く演劇集団「創造」の公演「でいご村から」(大城貞俊作、幸喜良秀演出)が20日、うるま市民芸術劇場響ホールであった。

全編しまくとぅばで演じられる2時間半の舞台劇には、市民も「村人」などの役で出演。劇団員と共に、沖縄戦の悲劇を描く舞台をつくり上げた。
 「でいご村から」は婚約者を沖縄戦で失った女性と、婚約者の父親で妻も失った男性を軸に、戦争の痛手を被った村を描いている。
 出演者は団員を含め約80人。「村人」などの役で地域の老人クラブのお年寄りや市民団体、琉舞研究所、天願区の獅子舞保存会のメンバーが出演した。
 「創造」が大勢の一般市民と舞台で共演するのは初めて。
 祝宴の場面で地謡の役を演じた澤岻安松さん(79)は「老人クラブのメンバーに誘われて出演することになった。いつもは古典音楽をやっている。今回のような演劇に初めて出たが、立派な物語であり、観客も喜んでいると思う。出演して良かった」と語った。
 観劇した島袋俊夫うるま市長は「地域の歴史や生活そのものが戦争にやられてしまうという物語であり、身につまされた。私たちの獅子舞も出演するなど地域の文化も舞台に取り上げられた。市民にとって、いい思い出になる」と話した。
 客席は立ち見が出るほどの盛況だった。原作者の大城貞俊琉球大教授は「それぞれの記憶が呼び覚まされたのではないか。舞台を見ることで、沖縄の歴史や私たちの足跡を振り返り、戦争の悲惨さと命の尊さをかみしめることができればと思う」と話した。
 「でいご村から」は29日午後6時半から、浦添市の国立劇場おきなわでも上演される。