温暖化で分散域縮小 サンゴ幼生、白化回復困難に


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
波利井佐紀准教授

 琉球大学熱帯生物圏研究センターの波利井佐紀准教授とオーストラリアの国際共同研究チームが、サンゴの幼生(子ども)は、地球温暖化で海水温が上昇すると、分散域が縮小し親サンゴの近くにとどまる傾向があることを突き止めた。

 サンゴは、幼生を水流に乗せ分散させることで分布域を広げる。琉球列島を含む多くのサンゴ礁は、離れたサンゴ礁間で互いに幼生を供給し合うことで、白化現象からの回復やサンゴ群集維持につながっている。
 波利井准教授は「沖縄本島には慶良間諸島から幼生が流れてきているが、温暖化によりその幼生供給の割合が下がったり、ルートが断たれたりするかもしれない」と述べ、温暖化による群集減少の可能性を懸念した。
 研究結果は、4月28日付の国際的な学術誌「ネイチャー・クライメート・チェンジ」(電子版)に掲載された。これまで気候変動による幼生分散への影響は判明していなかった。
 今回の実験は、水温27度、29度、31度の三つの水槽で実施。31度の水槽では、幼生が海底に定着するまでの浮遊期間が27度の水槽に比べ2日短くなった。浮遊期間が短いということは分散域が狭くなっていることを示し、幼生が親サンゴの近くにとどまっていると読み取れる。
 幼生数が100から50に半減するまでの期間も、27度の水槽では14日間だったが、31度の水槽では2日間で半減。水温上昇により幼生の死亡率が高まることも分かった。