「琉球うるしや」最後の作品展 魅力の伝道、今後も


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「大見謝恒雄漆芸展」の来場者に作品の特徴を解説する玉榮雅代さん(右)=2日、浦添市城間の琉球うるしや

 【浦添】県内の漆作家の作品を取り扱う漆専門店「琉球うるしや」で、「大見謝恒雄漆芸展」が開かれている。31日まで。琉球うるしやは6月15日で店舗を閉じることになり、これが最後の展示会。琉球漆器の魅力を再発見してもらいたいと開業した店主の玉榮雅代さん(64)は「漆工芸を途絶えさせてはいけない。ネット販売やイベントを通じて、漆の良さや作家を紹介していく」と漆の“伝道”を続ける。

 大見謝さんは県工芸振興センターで漆工芸の指導に当たっており、個展は昨年の還暦記念に続き2度目。
 漆の本場である石川県輪島市で20年以上修業し、繊細できらびやかな文様が目を引く蒔絵(まきえ)の技術に長(た)ける。特に「蒲葵蒔絵白漆箱」は、黒や赤のイメージが強い漆器にあって珍しい白色。玉榮さんは「漆でここまで白を引き出すのは難しい。沖縄では希少価値のある技術だ」と解説する。
 玉榮さん自身は漆について素人の主婦だったが、浦添市美術館で螺鈿(らでん)細工の講座を受けたのをきっかけに、県内の漆作家たちと知り合うようになった。
 「作品を作っても販路がない」という漆作家を取り巻く環境を憂い、2012年8月にギャラリーと漆教室、茶房を兼ね備えた店舗を市城間にオープンさせた。だが、開店から約2年で店舗販売に一区切りつけることになった。
 それでも「漆は高い抗菌作用があり、重箱に用いられてきたのも食べ物を腐らせないようにする昔の人の知恵だ。熱い汁を注いでもおわんを持つことができて使い勝手がいい」と普及への意欲は衰えることがない。「工業製品は完成時から使うほど劣化していくが、工芸品は使うほど100パーセントに近づいていく。琉球漆器の魅力は一度使ってみると実感できるはずだ」と熱っぽく語った。