金武ダム、王朝時代の「宿道」再現 歴史学ぶ新名所に


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 【金武】金武ダムは、敷地内で発掘された琉球王朝時代の宿道(すくみち)などの交通遺構を再現し、4月から一般開放している。遺構を再現したダム河口の「ヤマクモー広場」には戦前に建設されて現在も一部が残る「旧億首橋」もあり、町の歴史を知る新たな名所になりそうだ。

 宿道は琉球王朝時代(1429~1879)に造られた首里王府から各地を結ぶ道路。2006年、ダム敷地内の高台から億首川までの高低差約6メートルの斜面に石段や岩石がつづら折りに続く道が見つかった。文献などから宿道の「国頭方東海道(くにがみほうとうかいどう)」と判明した。
 ダム建設に伴い、発掘現場を含めて整備する必要があるとして、岩石などの遺構を別の場所で保管。ダム本体の工事が終了した13年10月ごろから、岩石を発掘場所に戻す作業を開始し、ことし3月末に終了した。
 宿道が再現された場所から億首川沿いに設けられた広場は、山から運ばれた材木を船に乗せる場所「山工毛(ヤマクモー)」だったことから、「ヤマクモー広場」と名付けられた。
 宿道の長さは約33メートルで道幅は約3メートル。ダム工事で高さが変わったため、再現箇所は本来と若干異なるが、岩の位置などはそのままだという。王朝時代の宿道を再現するため、両脇には松を植えている。
 広場には、1931年に建設され、沖縄戦で破壊された旧億首橋の一部が残っている。終戦直後は軍用道路だった旧国道、現在国道として利用している金武大橋を合わせて見ることができる。
 町教育委員会の安座間充さんは「昔の人が歩いていた道を知ることができる場所。しっかり残して地域の資源として活用してほしい」と話した。

金武ダムのヤマクモー広場に再現された琉球王朝時代の宿道=2日、金武町の金武ダム
ヤマクモー広場から見える旧億首橋。戦前に建設され、沖縄戦で破壊された=2日、金武町の金武ダム