恩師らの悲劇伝え 宮城さん、体験まとめ26冊目


社会
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平和を願う思いから、戦争体験記を毎年発行している宮城恒彦さん=豊見城市渡嘉敷の自宅

 【豊見城】座間味村出身で元小学校長の宮城恒彦さん(80)=豊見城市渡嘉敷=がこのほど、サイパン、テニアンでの戦争体験者2人の話を「バンザイ・クリフ―自殺の断崖―」と題した本にまとめた。

1989年から戦争体験記を毎年発刊しており、ことしで26冊目。宮城さんは「学校現場で平和学習の教材として役立ててほしい」と話している。
 体験記では宮城さんの小学校時代の恩師で座間味村出身で知念春江さん(故人)のサイパンでの体験、久米島出身の中村カメさん(101)のテニアンでの体験を収録した。知念さんの体験記はサイパンのバンザイ・クリフ(マッピ岬)から多くの人が海に飛び込んだ様子を目撃したことや、知念さんが生き延びて故郷の地を踏むまでを記した。中村さんの体験記は、喉の渇きや飢えの苦しみを味わったことなどをつづった。
 かつお漁のために座間味村から南洋諸島へ多くの島民が移住しており、県出身者の戦死数が多かった当時の状況なども詳しく解説した。同村出身の宮城さんは「私のおじはサイパンの生き残りだが、3人の子どもを失った。慶良間と南洋諸島とは切っても切り離せない関係。どうしても伝えたかった内容だ」と話す。
 宮城さんは毎年、体験記を島尻地区内の複数の小学校に数十部ずつ贈呈している。今年は千冊を印刷した。宮城さんは「まずは教師が読み込んで、子どもの学年に応じて内容を伝えてほしい」と願いを込める。