クロマグロ養殖に期待 羽地漁協、成魚販売も構想


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 【名護】羽地漁業協同組合(金城富久組合長)は、総合商社の豊田通商(名古屋市)と全面提携するクロマグロの稚魚養殖計画について、地域の水産振興や雇用拡大につながると期待を膨らませている。

当面は、人工ふ化した稚魚を体長約30センチ、1キロサイズの幼魚「ヨコワ」まで育てる中間育成を基軸に、さらに成魚まで育て出荷、販売する構想も描く。金城組合長は「漁協の目玉事業となろう。直売拠点も設けていきたい」と意欲を高める。
 豊田通商は人工ふ化、飼育した成魚が産卵するクロマグロの完全養殖技術を世界で初めて確立した近畿大学と技術提携。長崎県五島市で完全養殖した稚魚の中間育成を2010年から展開している。
 名護市源河沖2~3キロ地点に予定している今回の事業では、直径30メートルほどの円形のいけす6基を整備し、近大から提供を受けた5~6センチの稚魚を養殖する。当初5万匹の稚魚を受け入れる。幼魚は県内をはじめ九州などの他の養殖事業者へ出荷する。当面は5人ほどを採用、5年後には20人規模に拡大する予定だ。稚魚の成長は寒さや天候など自然環境に大きく左右される。五島市では生存率30~40%で、この向上が完全養殖の課題とされている。源河沖について羽地漁協の仲松潤氏は「天然のリーフがあり、潮の流れも良い」と説明。豊田通商農水事業部の森賢亮課長代理は「全国的に見ても中間育成に適した海域だ」と見ている。台風や赤土の影響などは、引き続き検証する。
 いけすの整備や育成技術の指導などは同社が担う。中間育成事業は漁協事業として展開する。
 漁協は現在、源河沖での新事業へ向け、県へ漁業権取得を求めており、来年の総会を経て9月ごろの許可を目指している。
 従来、クロマグロの養殖は天然ヨコワを捕獲し育成しているが、乱獲などで数が減少しており、水産庁は天然種苗を用いた養殖事業に制限を求めている。完全養殖は国産水産物の安定供給の面でも全国的に注目されている。

クロマグロの中間育成による地域振興に期待する羽地漁協の金城富久組合長(前列左)ら関係者=19日、琉球新報北部支社