闘病の子、遊び大事 南風原町でフォーラム


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 第1回「病児の遊びとおもちゃケア」沖縄フォーラム(同実行委員会主催)が15日、南風原町の沖縄小児保健センターで開かれ、医師や看護師、保育士、ボランティアら約80人が参加した。

パネルディスカッションや対談を通し、子どもの健やかな成長や発達を下支えする遊びの意義や、闘病中の子に豊かな遊びや経験を提供することの重要性を確認した。病児の心と体をケアするために、医師や看護師、院内保育士、ボランティアら他職種が連携する必要性も示された。

◆心の栄養補給
 東京西徳洲会病院小児センター顧問の二瓶健次さんは、長期入院する子どもは(1)体験(2)コミュニケーション(3)学習(4)楽しみ―の四つが不足することを指摘した。遊びやおもちゃがそれらを補う手段の一つであるとし、「遊びはあらゆる感覚で脳を刺激し、発達を促す」と述べた。
 県立南部医療・こども医療センターで2006年から病児支援のボランティアを続ける貝阿弥ひとみさんは「子どもの日常から遊びを切り離すことはできない」と強調。おもちゃを介して関わることで、不安を抱えた親子が「ほっとするのではないか」と語った。
 東京おもちゃ美術館館長の多田千尋さんは「子どもにとって遊びは食事と同じ。心の栄養補給だ」と述べた。その上で「おもちゃはささやかな応援団。3大グッドトイは(人の)手と声と顔だ」「一緒に過ごしてあげることが大事だ」と関わる人の重要性を述べた。
◆不可欠な保育士
 病児を支援する「わらびの会」事務局長の儀間小夜子さんは「看護師は業務で忙しく、子どもと遊んであげたくても制約がある」と述べ、院内保育士やボランティアの必要性を指摘。埼玉県の森医院こどもクリニック院長の森庸祐さんは「保育士は医師や看護師が拾えない親や子の一言を拾ってくれる」と力を込めた。
 琉球大医学部付属病院小児科医局長の吉田朝秀さんは、同院の年間入院患者数18~19万人のうち、約6・5%に当たる1万2千人程度が小児で、そのうち約1割が長期入院を要することを説明。県内の病棟で働く保育士は12人で、他県に比べ配置は進んでいるが、一人配置で不安を抱えやすい現状を報告した。
◆能力引き出す
 小児看護に詳しい名桜大副学長の金城やす子さんは「看護師は病気でできなくなったことを支援し、保育士はその子が持つ能力を引き出す視点だ。両方いてこそケアできる」と強調。病児の発達を保障する観点で保育士配置の必要性を指摘し、欧米の事例を踏まえて「(病児)15人に1人は配置してほしい」と述べた。
 県立南部医療・こども医療センター小児外科部長の金城僚さんは、おもちゃを用いて治療の事前説明をする「プレパレーション」に取り組んでいることを報告。遊びやおもちゃを病院に取り入れる意義を強調し、医師や看護師、保育士、ボランティアらが「互いにできること、できないことを分かった上で協力するとうまくいくのではないか」と語り、連携の必要性を訴えた。
 エフエム那覇社長の平良斗星さんが進行を務めた。

闘病中の子に豊かな遊びを提供することの重要性が示された第1回「病児の遊びとおもちゃケア」沖縄フォーラム=15日、南風原町の沖縄小児保健センター
フォーラム会場で紹介された、東京おもちゃ美術館所蔵の小児病棟向け移動ミュージアムセットに触れる参加者ら=15日、南風原町の沖縄小児保健センター