三線教本で沖縄戦紹介 渡嘉敷さんが発刊


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写真やエッセーがいっぱいのユニークな三線の教本を出した渡嘉敷政子さん=琉球新報東京支社

 【東京】練馬区在住の渡嘉敷政子さん(75)=琉球民謡伝統協会練馬支部長=がこのほど、三線の教本「沖縄を知って三線を楽しもう上・下巻」(沖縄教販)を発刊した。

通常の教本と違い、工工四(くんくんしー)と歌詞だけでなく、歌の背景にある沖縄の文化や歴史を解説した。6歳で体験した沖縄戦もコラムで記した。「沖縄戦の記憶もどんどん風化されてしまう。三線を弾くだけでなく、沖縄の歴史を知ることで歌の意味がよく理解できると思う」と話した。
 渡嘉敷さんは久米島出身。戦争末期に日本軍兵士が久米島住民をスパイ視して虐殺した事件にも本の中で触れた。「大人たちが『空からも陸からもやられる』と言ったのを覚えている。米軍の空爆と、日本兵からの虐殺の意味だった」と振り返る。
 戦後、久米島小中学校で教師となり、結婚のため上京。練馬区の児童館館長などを務めた。退職後、歌三線が上手だった母や祖母を思い出して三線を学び、現在は弟子らに指導。分かりやすく弾きやすさを心掛けた教本を6年かけて作成した。
 「東京では沖縄の基地問題が表面だけで語られている気がする。沖縄のつらかった過去や『命どぅ宝』など民の心を知れば、政治も違ってくるのでは」と言う渡嘉敷さん。「三線をきっかけに沖縄を知ってほしい」と話している。
 問い合わせは沖縄教販(電話)098(868)4170。