写真絵巻で政府批判 石川さん「ヤマトの人に見てほしい」


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沖縄戦を表現した写真絵巻について説明する写真家の石川真生さん=16日、豊見城市

 フェンスの前で頭から血を流して倒れ、息絶える男女。その傍らで、赤ん坊を抱いた母親がぼうぜんと立ち尽くす―。沖縄を撮り続けてきた写真家、石川真生さん(61)=豊見城市=が、沖縄戦の光景を独自に表現し、撮影した作品だ。

石川さんは現在、「私が解釈した沖縄の歴史」として、20枚の大型写真で構成する新作「大琉球写真絵巻」を制作中で、今月、撮影が終了した。
 薩摩藩による侵攻前から、「琉球処分」、沖縄戦、日本復帰、オスプレイ配備、名護市辺野古の新基地建設に向けた動き、そして、集団的自衛権を容認しようとする日本政府の姿まで、表現した。
 石川さんは撮影の狙いをこう説明する。
 「私は怒っている。かつては琉球を取られ、今も基地を押し付ける日本政府を正面から批判し、物を申すために撮影した」
 批判に共鳴する友人、知人にモデルになってもらい、衣装を身に着け、石川さんがポーズを指示する。2013年4月に撮影を開始した。
 沖縄戦を表現した写真は現在の米軍基地のゲート前で撮影した。「沖縄戦で命を奪われ、土地を取り上げられ、今も基地が残されている」という状況を、一枚の写真に閉じ込めた。
 作品の後半では、安倍晋三首相や石破茂自民党幹事長に扮(ふん)した人物も登場する。「昔から表現者は政治を厳しく批判してきた。私は写真という表現の手段を持っている。シビアに、直接的に、時には皮肉とユーモアも交えた」という。
 写真は縦1メートル、横1・1メートルほどに引き伸ばし、10枚を横一列につなげて布にプリントする。9月16日から21日まで、那覇市民ギャラリー(那覇市、パレットくもじ6階)で公開する。
 石川さんは「ヤマトの人たちにこそ見てもらいたい」と話し、本土での写真展の開催を呼び掛け、主催者を探している。
(安田衛)