舞台に世代、地域反映 インディペンデントin沖縄


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 一人芝居で競演する「インディペンデントin沖縄2014」が6月28、29の両日、那覇市のアルテ赤田ギャラリーホールで開かれた。大阪から各地に広がる同イベントの沖縄版立ち上げを目指し、演劇きかく「満福中枢」が主催した。

満福中枢の犬養憲子、ベテランの北島角子と吉田妙子、大阪の米山真理が出演。世代や地域を反映した多様な舞台は、制限があるようでどこまでも自由な一人芝居の魅力を伝えた。
 28日の公演を取材した。北島は「日本じん?」(宮城晴美原作、北島脚本・演出)を演じた。年配の女性が孫の友人に“立派な日本人”を目指しながらも差別されたうちなーんちゅの歴史を語る。沖縄出身の母を持つ子どもが県外の学校で教師に「混血」と差別されるくだりは北島が聞いた実話で、本作を演じるきっかけになったという。ぎこちない「標準語」で笑いを誘い、怒りに変わり、最後は笑顔で終わる。年輪を重ねた芝居は劇中の人物そのものになったかのようだ。
 犬養は「楽屋から」(犬養脚本・演出)を初演した。舞踊公演の楽屋で県外出身の仲間と世間話をするという設定。沖縄に住む人は思わず笑ってしまう話を織り交ぜ、米軍普天間飛行場が返還されたら「島全体をテーマパークにする」と気負わずに語る。北島ら戦争を体験した世代とは異なる感覚で沖縄を描いたが、終わり方にもう一工夫欲しい気もした。
 大阪の劇団「彗星(すいせい)マジック」の米山は「シロとクロ」(勝山修平脚本・演出)を演じた。少年と愛犬が過ごしたかけがえのない日々をつづる。疾走感ある音楽にテンポ良くせりふを乗せる手法はラップに似ている。だが音楽を先に作ったのではなく、せりふに合わせて旋律と背後の音楽を作ったという。米山は少年のように目を輝かせ体を大きく使って演じた。
 29日は北島が出演せず、吉田が「おろせない荷物」(上原直彦脚本・演出)を演じた。1944年当時、国民学校6年生だった女性が戦争体験を孫に語る物語。吉田も当時6年生で自身に重なったという。
 彗星マジックの勝山は「沖縄の役者は切羽詰まった問題もエンターテインメントにするのがすごい」と驚く。北島は「若い人の体験もあり私たちの体験もある。(共演して)互いに分かり合える」と語る。犬養は「来年から定期開催を目指しているので『また見ようかな』と思ってもらえたらうれしい。自身の作品はいろんな場所で経験を重ねて、深めて、今の沖縄を知ってもらえたら」と話した。(伊佐尚記)

うちなーんちゅの苦難を語る北島角子=6月28日、那覇市のアルテ赤田ギャラリーホール
若い世代が感じる沖縄を表現した犬養憲子
音楽に乗せて新鮮な芝居を見せた米山真理