志の輔 圧巻の話芸 らくごin国立劇場おきなわ


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 立川志の輔らが出演する「志の輔らくごin国立劇場おきなわ」(クリエイティブアルファ企画制作)が5日、浦添市の国立劇場おきなわで開かれた。志の輔は創作「買い物ぶぎ」と古典「帯久(おびきゅう)」を披露した。

多様な登場人物を瞬時に切り替え、硬軟織り交ぜた圧巻の話芸で観客を引き込んだ。弟子の立川志ぃさーも出演し、沖縄落語「ドルそば」でうちな~噺家(はなしか)の持ち味を発揮した。
 「面白くなくてもやじは飛ばさないでください。ここは議会じゃありませんので」。東京都議会の風刺で始めた志の輔。手応えを確かめるように笑いを取り、徐々に勢いを増していく。「買い物ぶぎ」は妻に買い物を頼まれドラッグストアに来た男の話だ。キッチン専用、風呂場専用の洗剤の横で「どこにでも使える」洗剤が売っている。「風呂場専用洗剤の立場がないじゃないか」という素朴な疑問から消費社会のおかしさが浮かび上がる。
 「帯久」は今も昔も変わらない人間の心の闇、情けを描いた。繁盛店の呉服屋は帯屋にお金を貸していたが、火事で焼けて困窮する。今度は帯屋にお金を借りに行くが、冷たくあしらわれた揚げ句に放火の疑いで捕まる。観客は何かが起こりそうな抑えた語りに息をのみ、最後は粋な笑いに包まれた。
 志ぃさーの「ドルそば」は、那覇のそば屋で客がお世辞を言って代金をごまかす。それを見ていた三良がコザの店で同じことを試みるが、うまくいかない。古典落語「時そば」を沖縄版にしたものだが、本土復帰前の雑然としたコザの情景が目に浮かんだ。
 そのほか、立川志の太郎の落語、松永鉄九郎の長唄もあった。落語の伝統と一線で活躍する噺家の力を感じさせる公演だった。沖縄ではかつて芝居の幕あいやラジオなどで漫才や講談が披露され、現在はお笑いがある。沖縄の話芸の今後を考える意味でも落語の上演は有意義ではないか。(伊佐尚記)

抑えた語りで観客を引き付ける立川志の輔=5日、浦添市の国立劇場おきなわ
そば屋が舞台の沖縄落語を披露した立川志ぃさー=5日、浦添市の国立劇場おきなわ