住民保護「記述なし」 民間戦争被害訴訟


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 沖縄戦と、パラオなど南太平洋の戦争に巻き込まれた民間人やその遺族らが、国に対して謝罪と損害賠償を求めた訴訟の弁論が23日、那覇地裁(鈴木博裁判長)で開かれた。

原告側は、国が作成したとされる「第32軍配備要図」や米軍進出経過図を証拠として提出。瑞慶山茂弁護団長は「日本軍の作戦行動概要図のどこにも、一般住民の保護に関する記述は一切ない」と指摘した。
 また、南太平洋の戦争で家族3人を失った柳田虎一郎さん(76)=那覇市=が意見陳述に立った。柳田さんは1944年、パラオから乗った引き揚げ船が攻撃を受けフィリピン沖で沈没し、ミンダナオ島にたどり着いた。山奥へ逃げたが、母はけがを負って出産後に帰らぬ人となり、弟も飢餓のため生後4日で亡くなった。3歳だった妹は米軍に保護されたが、移動中の船上で「もう難儀はしたくないよ」と言い残し息絶えた。
 柳田さんは「国が起こした戦争さえなければ、楽しく平和だった家族が悲惨な思いをしながら死ななくても済んだ」と訴えた。