乳児の車内放置死事件 県「虐待として検証必要」


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乳児が放置されていたパチンコ店の駐車場=7月22日、那覇市

 ことし6月10日、那覇市内のパチンコ店の屋外立体駐車場1階に駐車した車に生後5カ月の乳児を6時間半放置して、熱中症で死なせる痛ましい事件が起きた。乳児を放置した母親=重過失致死容疑で逮捕済み=は「少なくとも十数回は長男を車内に放置したままパチンコをしていた」などと警察の調べに供述したという。厚生労働省や県は「児童虐待に当たる」との認識を示し、県は検証が必要だとしている。

児童虐待に詳しい識者は「母親を責めただけでは解決しない」と話し、事件の背景から虐待を未然に防止する仕組み作りの必要性を訴える。一方、熱中症対策に詳しい識者は「子どもの車内放置は絶対にやめてほしい」としている。
 児童虐待は、(1)身体的虐待(2)性的虐待(3)ネグレクト(育児放棄)(4)心理的虐待―の四つに分類される。今回の事件について厚労省虐待防止対策室は「長時間放置し、保護者としての監護を怠っており、ネグレクトに当たる」と説明。国がまとめる検証事例報告の対象になるとした。
 虐待死亡事例が発生すると、県社会福祉審議会児童福祉専門分科会審査部会が設置され、検証が行われることもある。2010年の沖縄市乳児虐待事件の検証では、虐待予防を重視した情報収集システムの構築などが提言された。
 県青少年・子ども家庭課の大城博課長は「検証が必要だと思う。児童相談所と調整を進めている段階。今後、母親が居住していた自治体と調整をした上で、検証作業を進めたい」と話した。
 今回、事件の現場となったパチンコ店は業界を挙げて対策を強化するが、コザ児童相談所長も務めた山内優子沖縄大非常勤講師は「本質的な対策にはならない」とする。「子どもを長時間放置することは虐待だという認識はなかったのか。なぜ長時間パチンコをしなければならなかったのか。ギャンブルに興じる何らかのストレスがあったのか。働きたいけど働けず、生活に困っていたなど、何らかの事情があるはずだ」と指摘。「一人の問題とせず、事情を把握した上で対策が必要だ」と話した。
 (玉城江梨子)