被爆体験 継承を議論 広島でフォーラム


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被爆体験の継承について語る(左から)矢野一郎さん、金崎由美さん、大塚茂樹さん、前田耕一郎さん=5日、広島県の広島パシフィックホテル

 日本マスコミ文化情報労組会議(MIC、日比野敏陽議長)は5日、広島県の広島パシフィックホテルでMIC広島フォーラムを開催した。「被爆体験の継承~被爆者の高齢化。何をどう伝えるか~」をテーマにパネリスト4人が登壇した。子どもたちが関わる継承活動やインターネットを使った新たな取り組みなどを報告した。

 パネリストは原爆資料館前館長の前田耕一郎さん、広島女学院中学高校教諭の矢野一郎さん、中国新聞記者の金崎由美さん、岩波書店編集部の大塚茂樹さん。
 前田さんは被爆者の高齢化に伴い、被爆者以外が被爆体験を語り継ぐ伝承者の養成などに取り組んでいることを紹介した。体験を継承する上で、五感に訴えて想像しやすくすることや、事実を過剰にも過小にも表現せず、あるがままに伝えることが重要とした。
 矢野さんは首都大学東京と連携し、グーグルアース上に原爆関連の写真や証言映像を表示する「ヒロシマ・アーカイブ」を制作したことを紹介した。生徒が取材した証言映像も表示している。若者が入り込みやすい一方、内容は十分ではなく「これを機に広島に来てほしい」と話した。
 金崎さんは中高生が原爆平和報道に取り組む「ジュニアライター」の活動を報告し、「子どもの目を通して読者に(原爆について)知ってほしい。大人の記者が書いた記事とは違うものを感じてくれるのではないか」と語った。また海外に発信するため、ウェブサイトに原爆関連の英訳記事を掲載し、海外の研究者や市民団体に活用されていることを紹介した。
 大塚さんは被爆者と市民の懸け橋を目指した本作りの経験とその難しさを振り返り、「これからもひたむきに耳を傾けたい」と語った。(伊佐尚記)