オリブ山病院 月1回、座間味と南北大東に医師巡回


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南大東島への巡回診療で男性を診察するオリブ山病院副院長の仲里尚実さん(左)。手前は男性の妻=7月22日、南大東村保健センター

 特定医療法人葦の会オリブ山病院(上間一院長)は2010年から、精神科の巡回診療を沖縄本島の周辺離島で実施している。現在は座間味島と南大東島、北大東島を毎月1回、同院の医師が訪れて住民を診療している。

精神科医がおらず、療養環境が十分に整っているとはいえない小規模離島に住む精神疾患患者ら。同院の取り組みは離島の精神科医療のモデルケースにもなり得そうだ。
 同院によると田頭政佐前理事長(現会長)が地域医療に関心を抱いていたため、精神科医がいない離島での巡回診療実施を決めた。08年秋ごろから準備を始めて、10年5月から座間味島への巡回診療を始めた。座間味島の事例を聞いた周辺離島からの要望があり、12年6月から南大東島、北大東島、渡嘉敷島(現在は休止)でも診療を開始した。県内各福祉保健所によると現在、宮古、八重山地区を除く本島周辺離島では、同院のみが定期的な精神科の巡回診療を実施している。
 患者数は年々増加しており、14年7月末日現在までに4島で70人の患者を受け入れてきた。多くの患者は毎月の診療を継続して行っている。他の離島からも実施の要望が寄せられており、粟国村とは本年度中の実施に向けて調整しているところだ。一方、県や自治体からの補助はなく、渡航費や宿泊費負担も大きいため収益はないという。
 南大東島の診療を担当している同院副院長の仲里尚実さん(66)は「意思疎通の改善や徘徊(はいかい)の減少が見られる」と話す。「不安」や「緊張」、「幻覚による行動」などの18項目から症状を評価する「簡易精神症状評価尺度」を患者に実施したところ、多くの患者で症状の改善が見られたという。
 県は離島で精神疾患の相談事業を実施しているが、薬の処方などはしていない。南大東村保健センターの看護師、岩井田せつ子さん(63)は「県の相談事業では症状の改善があまり見られない状態だった。診療のため本島に行こうと思っても暴れて飛行機に乗れない人もいる。そういった人でも診療が受けられるようになった」と話す。
 仲里さんは「島には県立病院付属の診療所もあるが、精神科の診療は現実的に難しい。島外の人間だから話せることもある。毎月診療することで、離島の精神疾患患者やその家族の心の安定につながっていると思う」と意義を語った。
(大嶺雅俊)