下水再生水を農業に 県と京大、糸満で試験


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 県は京都大学と共同で、海に放流されている下水処理水をろ過膜や紫外線殺菌で再処理し「再生水」として農業に活用する計画を進めている。糸満市浄化センター内に再処理プラントを設置、3日から試験運用を始めた。栽培や品質試験を実施し、15年度までに再生水の水質基準や管理マニュアル案を作成する。

糸満市北部をモデル地区に、農業用水としての活用を目指す。新たな水源確保策として他地域への普及も図り、安定・計画的な農業生産につなげたい考えだ。
 本島中南部は農業生産額が他地域に比べて高いが、水源整備率43%、かんがい施設整備率は24%と、遅れている。一方、中南部にある5下水処理施設からは日量約27万トンが海に放流されている。
 モデル地区の糸満市北部は、地形や地質などから農業用水の開発が厳しく、地下ダムを活用している他地域と農業経営に格差が生じるなど対策が求められている。糸満市浄化センターは日量平均約1万トンを放流しており、再生水として活用すれば、モデル地区約340ヘクタールに必要な水量を賄えるという。
 再処理プラントは京都大学が主体となって開発。ろ過膜と紫外線殺菌でウイルスなどを除去し、再生水利用の先進地である米カリフォルニア州の世界で最も厳しい水質基準を指標に、沖縄独自の基準を作っていく方針だ。
 再生水は量・質的に安定供給ができるほか、窒素やリンなどの栄養素が含まれ、農業資源としての利用も可能だという。一方で、再処理にかかるコストや消費者の理解が課題として挙げられる。
 今後は、消費者や生産者、流通、医療、学識経験者から成る「リスクコミュニケーション検討部会」を開催し、再生水の農業利用への理解や消費者への発信の在り方なども議論していく。

再生水利用による沖縄型水循環システム
再生水をつくる再処理プラントについて説明する関係者=3日、糸満市浄化センター