エアギター世界一のアイドル名倉七海が凱旋ライブ


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凱旋ライブ前に記者発表会に臨んだ名倉七海=10月、東京・渋谷

激しさとりりしさと初々しさと

 エアギター世界一のアイドルってどんな子?
 スポーツ界で世界王者になったタレントはいっぱいいるが、芸能分野の世界一はとても珍しい。もともと芸能の腕を競う世界大会が、ほとんどないのだから。8月にフィンランドで開かれたエアギター世界選手権を史上最年少の19歳で制した名倉七海が、東京・渋谷で「凱旋ライブ」を開催。

「かわいすぎるエアギター世界チャンピオン」には、今後の成長を見たいと思わせる魅力があふれていた。
 ちなみにエアギターとは、音楽に合わせて実際にはギターを弾いていないのに本当に弾いているように見せるパフォーマンスのこと。お笑いコンビ「ダイノジ」の大地洋輔が2006年、07年の世界選手権を連覇して話題になった。
 平日の夕方、渋谷のビルの地下にあるライブハウスが会場だ。凱旋ライブ本番に先立つ記者発表会には、普段はコンサートや芸能イベントをほとんど取材しないメディアも詰め掛け、「世界一」のすごさを実感させた。
 照明が消えて真っ暗になると、会場のテンションが一気に高まる。スピーカーから大音量で音楽が流れ、名倉が登場。あっちこっちをぴょんぴょん跳ねて、頭を前後左右に振りながらの全力パフォーマンス。何ともいえないすごみがある。ロングの黒髪がびゅんびゅん振り回される姿は、人気ホラー映画の「貞子」を連想させて、ちょっと怖いくらいだ。
 激しいパフォーマンスとのギャップというのだろうか。曲間のトークなどで見せる愛らしい笑顔と初々しい語り口にびっくりさせられた。すました顔はりりしいが、ほほ笑むとアイドルフェースに変身。「かわいすぎるエアギター世界チャンピオン」と話題になったのも納得。はにかみながら語る姿は、さっきまでエアギターを披露していた世界覇者とは別人に見える。この初々しさは、是非いつまでも残してほしい。一方で、大先輩を話題にして「大地さんには負けたくない」と笑わせる余裕もあった。お笑いタレントの「いじり方」を心得ている。まだ若いのに、なぜか。
 もともと名倉は「宇宙初のエアギターアイドル」を掲げたグループ「テレパシー」に所属していた。グループがことし4月に解散。「エアギター世界一になる」というファンとの約束を果たそうと、世界選手権へのソロ出場を決意したという。きっとテレパシー時代のステージで培われたトークや表現力が生きているのだろう。本人も世界選手権での表現力は「テレパシーのおかげ」と認めている。
 そんなテレパシー時代からのファンも凱旋ライブに詰めかけた。名倉はソロ歌手としてのデビュー曲も披露し、この日はファンにとっても大きな節目となった。ライブが終わってから出口で語り合う名倉とファンの顔は希望にあふれていた。いまや「世界の名倉」と呼ばれる存在となった。これから、どんどん活躍の場が広がっていくはずだ。さわやかな大人のタレントに成長してお茶の間を楽しませている名倉の姿を想像したら、なんだか得した気分になった。(寺尾敦史・共同通信記者)
(共同通信)
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寺尾敦史のプロフィル
 てらお・あつし 1969年生まれ。四国、九州、東北の支社局を経て、現在東京エンタメ取材チームでエンタメニュースや町だねを担当。ことしは各地のスターに興味津々。ご当地アイドル、戦隊ヒーロー、お笑い、ものまね…。エンタメの世界は広いです。