<社説>介護休業拡大 離職防止の取り組み急げ


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 厚生労働省が介護休業期間を拡大する方向で検討に入った。介護を理由にした離職が相次ぐ状況を早急に改めなければならない。

 育児・介護休業法は、対象家族1人につき通算93日までの介護休業の取得を保障している。要介護認定の手続きや介護の準備に充てることを想定した休業期間だ。
 だが実際は、親などを介護しなければならない事態は突然やって来る。それが何年も続くかもしれない。介護するのは働き盛りの40~50代が中心だ。職場で休むとは言いにくい立場の人たちも多いはずだ。結果的に休暇を取るより、仕事を辞めることを選ぶ人も少なくない。
 家族の介護や看護を理由に離職する「介護離職」は年間約10万人に上る。約8割は女性だが、男性も増加傾向にあるという。働き盛りの世代が次々と離職に追い込まれる事態は、社会全体の大きな損失であることを確認しておきたい。
 介護休業の規定は1995年以降、見直されていない。厚労省は休業期間延長に向け、有識者研究会の議論を踏まえ来年6月ごろまでに報告をまとめる。財界や労働界の意見も踏まえ、早ければ2016年の通常国会に改正法案提出を目指すという。
 介護休業の拡大自体は正しい方向だ。その上で「休みを細かく分けて取りたい」といった実際のニーズに応えられるような仕組みづくりが重要だろう。厚労省は仕事と介護を両立させる有効な支援制度を検討する実証実験を始めている。勤務形態や人事制度の見直しなど、介護離職を防ぐさまざまな取り組みを企業側に促してもらいたい。国の休業中手当などの支援策を強化することも必要だ。
 12年の総務省就業構造基本調査の試算によると、県内の介護休業の推計取得率は1・4%で、全国の3・2%を大きく下回る。県の調査では県内事業所の約4割は介護休業制度を設けていない。
 沖縄は小規模・零細企業が多く、専門家は「休業に踏み切れない労働者が多いのでは」と推測する。仕事と介護に疲れ、離職に追い込まれる人たちが相当数いるのではないか。給与の4割が支給される国の介護休業制度などの周知も徹底すべきだ。
 団塊世代は今後5年間で70代になる。介護離職の急増が懸念されており、仕事と介護を両立できる環境の整備は喫緊の課題だ。社会全体で危機感を共有したい。