高齢牛“快挙” 無双宇良部親方、軽量級沖縄一へ復帰


社会
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飼い主の我那覇春樹さんと、無双宇良部親方=23日、今帰仁村平敷

 【今帰仁】うるま市石川多目的ドームで9日に開催された第102回秋の全島闘牛大会(県闘牛組合連合会主催、琉球新報社共催)で、「無双宇良部親方」が軽量級全島一に返り咲いた。闘牛史上、激戦の軽量級で王座に返り咲いたのは2頭目。人間の年齢に置き換えると70歳になる高齢牛の“快挙”に関係者は「体力、闘争心ともすごい」とたたえ、喜びに沸いた。

 無双宇良部親方は、20年ほど前に活躍し、不敗神話をつくった徳之島の名牛「誠大力」を親に持つ。飼い主の我那覇春樹さん(41)=今帰仁村謝名出身=が日ごろから牛に愛情を注ぎ、育ててきた。
 無双宇良部親方は、昨年8月の全島大会に、琉仁謝名親方の名で出場。嘉良久亥背白を破り、初の琉球新報杯を手にした。ことし2月、2度目の防衛戦で大蛇王に惜しくも敗れた。その後、古堅モータース白眉にも敗れた。
 一時期は自信を喪失して引退も考えていたという。しかし「このままでは終われない」と練習を積み、再び挑戦権を獲得した。因縁の相手「龍天龍鬼丸」を破り、見事返り咲きを果たした。
 闘牛大会で勝ち続けている牛でも全島大会出場は難しく、また一度負けた牛が再度、優勝戦に出場できるのはさらに厳しい。勝利するのはなおのことだ。長い歴史の中でも、激戦階級の軽量級の返り咲きは「与那国嵐」だけだ。無双宇良部親方が2頭目の栄誉となった。
 今大会は序盤、龍天龍鬼丸の鋭い角を武器にした強烈な突き掛け技に苦しんだ。一進一退の攻防が続いたが、無双宇良部親方の得意の跳ね上げがさく裂。9カ月ぶりに王座を奪回し、会場4500人の闘牛ファンを沸かせた。
 飼い主の我那覇さんは「高齢牛と思えず、闘争心がいまだに衰えないところがすごい。仲間や関係者らの協力や支えがあってつかんだ快挙だ」と愛牛をたたえた。
 我那覇さんは「祖父の隆盛さんの影響で25歳から飼い始めた。私自身の闘牛歴の中で、最高で特別な牛となるだろう」と話した。
(新城孝博通信員)