伊良部航路 来月に廃止 大橋開通で歴史に幕


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 【伊良部島=宮古島】来年1月末に伊良部大橋が開通することに伴い、なくなるものがある。長年にわたり地域から親しまれてきた宮古島・平良港と伊良部島・佐良浜港間の伊良部航路が廃止される。

多くの船員が尽力し、雨の日も風の日も、人、物を運び続け、地域の暮らしを支えてきた。定期航路が両岸を結ぶ最後の師走を迎える中、愛着を持つ市民からは「船がなくなるのは寂しい」と惜しむ声が聞かれた。
 来年1月31日を最後に伊良部航路を廃止するのは、宮古フェリー(新垣盛雄社長)と、はやて(川平三秀社長)の2社。両社合わせて1日当たり36往復程度を運航。年間60万人余り(沖縄総合事務局運輸部・運輸要覧より)を運び、市民の足として親しまれた。
 航路の免許は古いところで1966年に宮古フェリーの前身・合名会社伊良部海運が取得。伊良部村史などによると、伊良部島と島内外は古くからくり舟などで往来があり、明治末期には2隻の帆船が運搬船として運航するようになった。
 長年にわたり親しまれてきた航路や船員に感謝を伝えようと、宮古島市伊良部商工会青年部は9日、佐良浜港に「ありがとう」と書いた垂れ幕を掲げた。久貝博義部長は「このフェリーのおかげで生まれた命もある。地域経済も支えてきた。当たり前にあったものがなくなる実感はまだ湧かないが、感謝の気持ちでいっぱい」と話す。
 佐良浜に嫁に来て約40年になるという浜川銚子さん(67)は「毎週のようにおばーの家を訪ねるので、頻繁に使っていた。船がなくなるのは寂しいね」と声を落とした。
 これから年末年始に差しかかり、桟橋は帰省客や貨物でますますにぎわいを見せる。
 宮古フェリーの新垣社長は「最終運航の日が近づくにつれ、込み上げてくるものがある。従業員のことを思うと会社をなくすのは忍びないが、地域の人に支えられてここまできた」と言葉を詰まらせる。
 「最後の運航まで気を緩めることなく、一日一日の点検を十分して、安全航海を全うしたい」と誓った。

伊良部航路や船員に感謝の思いを込めて垂れ幕を掲げた伊良部商工会青年部のメンバーら=9日、宮古島市伊良部の佐良浜港
2社の船が頻繁に発着する平良港=9日、宮古島市