県外で沖縄戦教材、回収の動き 「9・29の会」は問題視


社会
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朝日新聞がことし6月に学習用として発行した特集紙面「知る沖縄戦」

 朝日新聞が6月に作成した中高生向け特集紙面「知る沖縄戦」をめぐり、大阪府松原市の学校で同教材の回収や埼玉県で県教育委員会が使用の有無を調べる動きが出ている。回収理由について「『強姦』という表現が発達段階に合わない」などとしている。

「集団自決」(強制集団死)の軍命を歴史教科書に明記するよう活動している「9・29県民大会決議を実現させる会」(玉寄哲永世話人)は16日の会合でこのような動きに危機感を強め、抗議行動を行うことを決めた。
 「知る沖縄戦」は、朝刊の半分の大きさのタブロイド判でカラー12ページ。11人の家族を失った女性やひめゆり学徒、「集団自決」の経験者の証言を中心に紹介した。38万部発行し、希望する学校に無料で配布した。
 出席者からは「沖縄戦の史実をゆがめようとする動きだ」など懸念の声が上がった。
 実現させる会のメンバーで白梅同窓会会長の中山きくさんは「特集紙面に書かれていることは事実だ。何もおかしいところはない」と評価。同じく沖縄戦を経験した玉寄さんも「沖縄戦を体験した人の記録そのものだ。批判的な報道は許しがたい」と語気を強めた。高嶋伸欣琉大名誉教授は「史実をゆがめようとする動きで見過ごせない。早く声を上げるべきだ」と危機感をあらわにした。
 9・29の会は同特集について「一方的な歴史観に基づく副教材」とした批判的な報道が教育現場に影響を与えているとし、産経新聞に抗議することを決めた。