コラム「南風」 また明日


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 「ここがなくなったら、うちらは見捨てられるってことだよね?」と、15歳の少女がつぶやく。
 「子どもの居場所づくり支援事業」。さまざまな要因で引きこもりや非行等の状態になっている生活保護世帯の中学生を対象に、安心して過ごし、学ぶことのできる居場所の提供を行う。その居場所は「Kukulu(くくる=心)」と名付けられ、昨年の7月に開所した。教育ではなく福祉の観点で自治体とNPOが協働した居場所事業は全国的にも珍しく、那覇市外や県外からもその実績と共に注目をされ始めたところである。私も食育スタッフとして、彼らの食事情から問題を顕在化させ続けてきた。その居場所が今、存続の危機に立たされている。

 那覇市が事業を継続できない最大の理由は、新しい法律によるものだ。来年4月から施行される「生活困窮者自立支援法」では、事業費に対する国の補助率は、今までの100%から50%に減少し、地方自治体が残りを負担することになるのだが、那覇市はそれができない。国が支援の対象を広めた結果、問題を抱え、本当に孤立している子どもたちの居場所がなくなってしまうのは、なんとも皮肉な結果だ。
 この事業の重要なポイントは、教育ではなく福祉の観点からの支援だということ。Kukuluに来るような子どもたちは、学習支援以前の「生活支援」が必要な貧困状態にあり、それは教育とは役割分担して取り組むべき、根の深い社会問題なのである。彼らが時間をかけた包括的な支援を受け、生活保護世帯から自立した場合の効果は計り知れないが、今の事業ではそれを追うことができない。
 「また明日ね!」と言って別れられるのは、明日も会える人がいるから。明日も会える場所があるから。今、われわれ大人の責任と今後が問われている。
(今木ともこ、NPO法人沖縄青少年自立援助センターちゅらゆいフードプロデューサー)