元「不良」男性が、少年非行防止で夜回りボランティア


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夜回り活動で、10代の少女(手前)に声を掛ける田場豊さん=22日、国際通り

 「非行の入り口」と呼ばれる子どもの深夜徘徊(はいかい)。那覇市の自営業、田場豊さん(45)は家庭などで問題を抱え深夜徘徊を繰り返す子どもを助けたいと、深夜の国際通りで夜回りボランティアをしている。

ことし5月から週1~2回、午後10時ごろから国際通り周辺を歩き、深夜徘徊をする少年らに帰宅を促す。田場さん自身も不良少年として荒れた生活を送ってきた経験を持つ。自身の経験から「子ども目線」の対話を心掛け、非行に走る子どもたちへ手を差し伸べている。
 「もう10時を過ぎているぞ、帰ろうか」。22日午後11時ごろの国際通り。道路の縁石に座る10代の少女2人に田場さんが声を掛けた。少女は18歳と17歳、2人ともたばこを吸っていた。田場さんは頭ごなしに叱らず、帰宅を促す。途中から合流した16歳の少年には、肩に手を置き話し掛けた。少女らは「もう帰ります」と応じ、その場から去って行った。
 田場さんの活動の原点には幼少時の経験がある。父親は酒を浴びるように飲み、田場さんに暴力を振るった。田場さんは小学校高学年から不良行為に走った。深夜徘徊や飲酒、たばこを吸い、何度も警察に補導された。成人しても過度の飲酒で生活が困窮したことがある。非行少年を見ると、過去の自分を思い出すという。
 昨年冬、警察署から依頼を受け、集団飲酒で補導された不登校の女子中学生らに自身の経験を語った。これを機に少女らと交流が生まれ、子どもの非行防止活動に関わるようになった。田場さんに「子どもたちが自分と同じ道を歩んでほしくない。見て見ぬふりはできない」との決意が生まれた。この少女らに「当たり前のことをやろう」と幾度も声を掛けた結果、少女らは今夏から学校に通うようになった。少女の一人は当時を振り返り「家も学校も楽しくなかったけど、田場さんは分かってくれた。信頼している」と話す。この少女は現在、高校進学を目標に勉学に励んでいる。
 田場さんの活動に、那覇署の知念太少年課長は「田場さんほど積極的に夜回りをしている人はほとんどいない。深夜徘徊は『非行の入り口』。早い段階で声掛けし、体験談を語ってもらっている田場さんの活動は深夜徘徊をなくすために重要だ」と話した。
 「元から悪い子はいない。何かしらの原因があり、心をほどくには大人が声を掛け友達になることが大事だ。これからも子どもたちを守っていきたい」と田場さん。1人でも多くの子どもたちに、手を差し伸べていくつもりだ。
(梅田正覚)