エボラ熱:「過剰隔離、子供が犠牲」現地治療の日本人医師


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 エボラ出血熱の流行が続く西アフリカのシエラレオネで、「国境なき医師団」の医師として日本人でただ一人、患者の治療に当たった加藤寛幸さん(49)が29日、毎日新聞のインタビューに応じた。加藤さんは「世界に感染を広げないという大義名分の下で過剰な隔離が行われ、子供たちが犠牲になっている」と指摘。「現地では何も終わっていないことを忘れないで」と訴えた。【清水健二、桐野耕一】
 小児救急が専門の加藤さんは11月7日から1カ月間、シエラレオネ東部のカイラフンにあるエボラ治療センターで、主に0〜15歳児の治療に従事した。
 センターは最大120人を収容でき、多い時期には毎週60〜80人の患者が搬送されてきた。救急車に10人近くが押し込まれて数時間かけて運ばれ、到着時には数人が死亡していることも珍しくなかったという。
 治療に当たる外国人医師は4〜5人で、全身を完全に覆い、防水性の高い防護服を着用。体力を消耗するため1回の活動は1時間に限られた。患者の吐いた物が服に付いた場合は、シャワーのように頭から消毒液を浴びて次の患者を診た。
 エボラ熱感染の疑いがある住民は、治療施設に入るまで各地の待機施設に収容されたが、この中には、親をエボラ熱で亡くして行き場のない子供もいた。「症状がない子供たちまで隔離対象にされ、無駄に感染させられている」と加藤さんは憤る。救いだったのは、発症を免れた子供たちが入る孤児院が「予想以上にいい施設だった」ことだという。
 滞在中に日本でのエボラ熱報道は激減し「西アフリカの現状が忘れられた」ように感じた。「ヒトとカネと施設があれば、死亡率はもっと低くできる。現地の人の犠牲の上にある程度の封じ込めが成り立っているのが現状で、支援の手を緩めてはならない」と力を込める。
 【ことば】国境なき医師団
 非営利の国際医療・人道支援団体。本部はなく、世界28カ国に事務局がある。1999年にノーベル平和賞を受賞した。日本では約300人の医師や看護師、事務スタッフが登録し、毎年90人前後が世界各国に派遣されている。エボラ出血熱対応では今年3月から現地支援に入り、7カ所で治療センターを運営。日本からは延べ16人が派遣されている。
(毎日新聞)