『おきなわ 小学校国語授業のあじまー』 生きる力を育む指南書


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『おきなわ 小学校国語授業のあじまー』村上呂里、玉城きみ子、辻雄二編著 フォレスト・2000円+税

 あじまーとは、沖縄語で「十字路」である。人は、十字路では立ち止まり前後左右を確認する。そして、方向を見定めて歩み出す。
 今回、「おきなわ小学校国語授業のあじまー」が、沖縄県国語科の授業づくり研究会より刊行された。本書は、第1部理論編、第2部学校ぐるみの実践事例、第3部地域発・実践交流から構成されている。

 学習指導要領国語編には「基礎的・基本的な知識及び技能を確実に習得させ、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、その他の能力を育むとともに(中略)言語活動を充実する」とある。また、国語編においては「実生活で生きてはたらき、各教科等の学習の基本ともなる国語の能力を身に付けること」が示されている。
 授業には、理論と実践の一体化が求められる。本書は、理論を基に学校の実践事例、さらには地域との実践交流が網羅され、まさに理論と実践が一体となり、国語科を通して生きる力を育む指南書と考える。
 ところで、2014年度全国学力学習状況調査において、本県は小学校全科目で最下位を脱出し、成績を向上させた。「信じられない飛躍」や「沖縄教育界の夜明け」などの文言が新聞に躍ったことは記憶に新しい。学力向上は、一朝一夕で形成されるものではない。教師の教材研究と授業改善、さらには家庭学習の強化などにより効果を上げる。
 ダイヤモンドは、ダイヤモンドでしか研磨されない。子どもというダイヤモンドを光り輝かせるには、教師もダイヤモンドにならなければならないと考える。本書は、ダイヤモンドを目指す教師のマニュアル書となり得る実践書であると期待する。
 分かる授業を構築するには、これまでの実践を振り返り、立ち止まり、指導の方向性を見定めて歩み出さねばならない。すなわち、常に授業という「あじまー(十字路)」で子どもの姿を見極める必要がある。本書には、そのヒントが多く織り込まれている。
 (崎原永輝・沖縄県小学校長会長)
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 むらかみ・ろり 琉球大学教育学部教授。
 たまき・きみこ 琉球大学教育学部附属教育実践総合センター准教授。
 つじ・ゆうじ 琉球大学教育学部教授。