県系3世、神戸市で情報発信 スペイン語で知識伝える


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スペイン語で防災情報を発信し続けている大城ロクサナさん(右)といとこの野口セレネさん=10日、神戸市

 ペルー出身の県系3世、大城ロクサナさんは阪神・淡路大震災で被災した時に言葉の壁に阻まれ情報を得られなかった経験から、兵庫県に住むスペイン語圏出身者のために防災情報などをスペイン語で発信する「ひょうごラテンコミュニティ」を立ち上げた。2011年の東日本大震災以降は東日本の被災者に向けても情報発信を続けている。

 1991年から日本に住み始めた大城さんは95年の震災当時、ニュースなどの日本語を聞き取ることができなかった。大きな地震が起きたこと以外は分からなかった。「どこに逃げたらいいのか。何が起きているのか。頼る人もいない。精神的な不安が大きかった」と振り返った。
 被災後、日本語を猛勉強した。出身国のペルーでは防災訓練などが一般的でない。震災に関する知識も学び直した。
 現在は「ひょうごラテンコミュニティ」代表を務め、防災情報や生活に必要な情報をスペイン語で発信している。情報誌を毎月1万2千部発行し、無料配布している。毎週水曜日はラジオ放送で防災について伝えている。地域で異文化交流の催しも開く。日ごろの近所付き合いは災害時の安全にもつながる。
 東日本大震災が起きた11年、ひょうごラテンコミュニティに問い合わせが殺到した。情報誌でも半年間、東日本大震災特集を続けた。被災地でも無料配布している。大城さんは「20年前は困っていた立場だった。被災した経験があったから東日本に住む人たちを支援できた」と話した。
 「災害の発生を止めることはできないが、被害を抑えることはできる」。震災はいつ起きるか分からない。だからこそ、日ごろから震災の怖さや防災の知識を伝え続けたい。(明真南斗)