平和と共生 追求 伊江島・宿泊施設「土の宿」33年


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「土の宿」を立ち上げ33年の木村浩子さん(中央)と次代を引き継ぐ新垣正樹さん(左から2人目)ら=2014年12月8日、伊江村東江前の「土の宿」

 伊江島に根を張り、33年。脳性小児まひによる言語障がいと両手右足硬直の重度障がいのある木村浩子さん(77)=山口県周東町出身=が、平和と福祉を共に考える場として始めた宿泊施設「土の宿」が伊江島に立つ。

沖縄戦の激戦地から平和を考え、障がい者や高齢者の介護を通じた共生について思考する場には、全国から若者や障がいのある人が訪れる。その宿は、戦時中に障がいを理由に日本軍から殺されかけた木村さんが、重度障がい者の自立と平和な世を模索し、たどり着いた沖縄で築いた人生の結晶だ。木村さんは今、次の世代に思いを引き継ぎ始めている。
 2014年、木村さんは宿を運営するNPO共に生きるネットワークまなびやー理事長を退き、新垣正樹さん(39)=北部自立生活センター希輝々(きらら)代表=にたすきをつないだ。木村さんが追求する「介護を愛し、共に学ぶこと」とは何かを考える場を継承する新垣さんは「障がいのある人が自立するのに何が必要か見詰め、一般の人も含めて人間関係の構築を高める場にしたい」と意欲を語る。
 昨年の名護市長選、県知事選で辺野古埋め立て反対を訴え、木村さんはハンストを実行した。「震災、戦争、もし何か起こったら一番私たち(障がい者)に降りかかる。もうそれが目の前に来てるんだ」。辺野古埋め立て反対の現場も訪れ、学生とも対話する。「差別の問題をここだけでしゃべって自己満足を穴に埋めるような“王様の耳はロバの耳”じゃ駄目だよ。やっぱり私たちはあっちこっち歩かなきゃ駄目」と語り掛ける。
 昨年末、福岡県糸島市から古賀麻紀子さん(37)、多比良亜希さん(34)、富永愛さん(33)が訪れた。3人が「生きる力のすごさにひたすら感動する。お会いできて良かった」と喜ぶと、木村さんは「テレパシーを送ってたよ」と笑った。
 定員は20人、宿泊は自炊。体温調節の難しい障がいにも配慮し、4部屋のうち3部屋はエアコン付き、一部屋に電動ベッドあり。要予約、当日飛び込み宿泊は不可。宿泊やスタッフ応募への問い合わせは「土の宿」(電話)0980(49)3048(午前10時~午後4時)まで。
(石井恭子)