被災の記憶 沖縄に継承 向さん県内5学生に講義


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小学校の校舎だった建物で震災の記憶継承について語る向恵子さん=13日、神戸市長田区

 阪神・淡路大震災で甚大な被害を受けた神戸市長田区で地域活性化と震災の記憶継承に携わる県出身者がいる。嘉手納町出身の向(むかい)恵子さん(61)=神戸市北区=だ。夫の実家がある神戸市で被災した経験から次世代への記憶継承を目指している。

 向さんは現在、神戸市にある市立地域人材支援センターの副センター長を務め、年代に合わせた震災体験学習を企画し続けている。
 10日には「沖縄の若者にも防災の大切さを知ってもらいたい」と、神戸市で開かれた防災に関する発表会に沖縄の学生5人を呼んだ。沖縄から発表に向けた事前学習への参加が難しいため、向さん自ら沖縄に出向き大震災について講義した。学生たちは案を出し合い防災に関する歌を作成。CDにして、神戸市の小中学校に配布する予定だ。
 阪神・淡路大震災で向さんの自宅の壁にはひびが入ったがけがはなかった。同じ市内でも長田区などに壊滅的な被害が出ていることを知り衝撃を受けた。「私たちにできることは何か」を考え、おにぎりの炊き出しを始めた。近所に呼び掛け、毎日千個の炊き出しを3カ月続けた。
 神戸市北区に住み始めたころ、周囲になじもうと、婦人会やPTA活動に積極的に参加した。その中で大震災時、火災を免れた長田区の数少ない建物である、二葉小学校の校舎を保存する運動にも関わった。
 向さんは沖縄の風土や文化に合った防災方法を確立する必要があると考えている。だからこそ「大きな地震を知らない沖縄の若者が神戸で起きたことを学んで、沖縄に持ち帰ってほしい」と語った。今後、神戸で培った経験を生まれ育った沖縄のため役立てたいと思っている。(明真南斗)