学徒隊証言、端末で追体験 壕や慰霊塔にQR案内板


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 県は戦後70年の取り組みとして2015年度、沖縄戦時に学徒隊がたどった壕や解散命令が出た場所などで、スマートフォン、タブレットの端末を操作すると、体験者の証言記録を聞くことができる環境を整備する。沖縄戦の継承のため、若年世代が学徒隊の体験を追体験しやすくすることが狙い。主に学校行事や修学旅行での活用を見込んでいる。

 県平和援護・男女参画課によると、これまで若年世代が沖縄戦を追体験するのに戦跡などでの語り部による証言が効果を上げてきた。だが沖縄戦体験者の高齢化による減少などで、証言を聞く機会が減っている。若者世代がより追体験しやすいように、学徒隊の証言を用いる。
 学徒たちの学校跡や解散命令が出された場所、慰霊塔などにQRコードを載せた案内板を設置する。QRコードにスマホなどをかざせば、証言が流れる仕組みを想定している。学徒隊がその場所にいた時の戦況が分かるような説明も読み上げる。
 沖縄戦では21の学徒隊が戦場に駆り出された。学徒隊の経路ごとに原則、4カ所の案内板を設置する。19経路に計55カ所の案内板設置を予定している。1カ所当たりの証言時間は10分程度で、早く整備できた学徒隊の証言から順次公開し、早ければ10月から聞けるようになる。
 戦後70年事業としては、沖縄戦体験者の証言が5カ国語で閲覧できるタブレット端末を平和祈念資料館に設置する事業も行う。両事業費として、県は一括交付金を財源に15年度予算に約4400万円を計上した。

 【沖縄戦の学徒隊】 沖縄戦では男子が師範学校と中等学校12校、女子が師範学校と高等女学校9校の計21校から、二千数百人が戦場に駆り出された。男子は鉄血勤皇隊として通信や弾運び、戦闘参加などを強いられた。女子は看護要員として野戦病院で日本兵の看護や死体埋葬、食事や下の世話などに当たった。約半数の1600人超が命を落とした。