【伊江】伊江村は4月1日から、救急患者搬送船の運用を開始する。村などによると、医療機器を備えた救急患者搬送専用の船は、県内では初めて。
急患搬送船の航行で、これまで漁船で20分以上かかっていた本島までの距離が最短12分で行けるようになり、離島苦の解消が期待されている。
搬送船は、内閣府の沖縄北部連携促進特別振興事業の予算約1億4千万円で整備した。船内には、人工呼吸器や電動式吸引器、酸素吸引装置、ストレッチャーなどを完備。全長17・9メートル、幅4・2メートルで最大20人が乗船可能だ。水難事故に備え、小型ボートやはしごも備え付けられている。船の名前は「みらい」。伊江中1年の具志堅花音さんが名付けた。
これまで昼間の急患搬送は、基本的にはメッシュのドクターヘリを利用するが、ヘリがすぐに呼べない場合やヘリが着陸できない夜間は小型の漁船を利用していた。しかし、漁船では本部まで25分以上かかる上に、漁船内のいすを利用した急ごしらえのベッドしかないなど医療的な設備が整っておらず、安全面にも不安があった。今後、これまで漁船を利用していた場面で搬送船を活用する。
伊江村立診療所の阿部好弘所長は「狭い漁船は揺れるため、波が高い夜は出られず夜間に診療所で対応することもあった。搬送船で安全に搬送することができる」と期待を込めた。
両親をドクターヘリや漁船で搬送した経験がある知念厚子さん(60)は「漁船では時間がかかり、ヘリは付き添いができない。こういう船ができたら家族も安心して搬送できる。村民が待ち望んでいた」と喜んだ。