対馬丸の悲劇伝える 女優・松木さん、体験者らに朗読、歌


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対馬丸撃沈に遭い命を取り留めた平良啓子さん(左)と、体験談を朗読する女優の松木路子さん=2日、本部町

 【本部】女優・松木路子(みちこ)さんが2日、本部町のアイスクリンカフェ・アークで朗読と歌を通して対馬丸撃沈の悲劇を伝える「朗読と、歌の夕べ―対馬丸の子供からあなたへ」を開いた。

松木さんは、国民学校4年の時に乗船し命を取り留めた平良啓子さん(80)の体験を本人の前で朗読した。平良さんは「次世代に伝えてくれる人がいてうれしい」と語った。
 7年前、那覇市若狭の対馬丸記念館を訪れて衝撃を受け、朗読の活動を始めた。東京都で朗読会を続けており、平良さんの体験を中心に紹介している。
 朗読では沈没する船の様子や漂流中の恐怖が紹介された。食料を譲ってくれた女性の話に及ぶと、平良さんは涙を拭っていた。「朗読を聞きながら、海に浮かんでいたあの時の光景が鮮明によみがえった」と話し、「戦争は意味がない。得もしない。なぜ戦争したがる人がいるのか、70年たったいまも理解できない」と訴えた。
 対馬丸の引率教諭だった新崎美津子さんの娘・上野和子さん(68)=栃木県=も登場し、生前の母の思いを伝えた。教え子を救えなかったと自責の念を募らせ、戦後は沖縄で暮らすことができなかったという。上野さんは「母は心の中でずっと子どもたちのことを思っていたのに、親たちに『申し訳なかった』という一言をついに伝えられなかった。娘の私が引き継ぎたい」と話した。
 約50人の来場者は目頭を押さえたり、メモを取ったりしながら耳を傾けた。松木さんは「東京でも今後、対馬丸の悲劇を伝える活動を続けたい」と述べた。