おんなの駅、ドアにほのぼの“指令” 触れ合いのきっかけに


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 【恩納】恩納村仲泊の「おんなの駅『なかゆくい市場』」の出入り口の前では、なぜか人々が一瞬立ち止まりほほ笑む。押し引き式のドアには「元気いっぱい押す」「愛を込めて引く」「ハンドパワーで押す」などの“指令”メッセージが貼られ、地元客や観光客を楽しませている。実際にメッセージ通りに開け閉めしておどける人も。

このメッセージを2008年から書き続けているのが職員の大城平(たいら)さん(28)=村仲泊=だ。
 もともとは06年ごろに退職した先輩が始めた。当初は店舗のドアが開けっ放しになって、冷房の効率が悪くなるのを防ぐための策だったが、書き連ねられたメッセージを見た客が楽しそうにしていた。先輩の退職後「面白いのにもったいない」と、誰にも言わずに一人で引き継いで今日に至る。小中高と友だちを楽しませるのが好きだった。
 「作品」は多くて2週間に1回の頻度で作る。これまでに100以上の作品を残した。客の反応のいいものだけを厳選し、そうでないものは捨てていく。貼られたメッセージの持ち帰りを希望する人も。今も大城さんが「やっぱりすごい」とうなる先輩の作品も現役で使われている。30個ほどあったというが「台風で飛んで10個ぐらいになった」と、大城さんは申し訳なさそうだ。
 「『ただいまー』って引く」のメッセージを見て、実際に「ただいま」と言いながら入って来た客。それに対し大城さんは「お帰り」と返す。「仲良くなって接客のきっかけになる」と思わぬ効果も語る。「エスコートして引く」ではカップルが手を取り合い入店、2人の心を温かくした。
 「地元の人も多く来てくれるので、しまくとぅばも勉強しながら織り交ぜていきたい」と話す大城さん。「普通に買い物するよりは、笑って帰ってほしい」と、今日もまたネタ探しに考えを巡らせている。(長浜良起)

メッセージの一例「色っぽく引く」
「ハンドパワーで押す」を実際に試みる大城平さん(下)と、客の桑田敏和さん(上)、浦中紫帆さん=6月25日、恩納村仲泊のおんなの駅「なかゆくい市場」