【チャイナ網路】「檳榔西施」という職業


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 時には一瞬全裸かと見紛うほど過激な衣装を着け、たばこと並ぶし好品「檳榔(びんろう)」を売る「檳榔西施」。彼女たちの職場は、郊外の幹線沿いにしつらえられた3畳ほどのアクリルボックスだ。登場以来10余年。すでに“台湾名物”の観さえある。
 大胆な衣装は、案外その店支給の制服だったりする。本人も最初は戸惑うが、「そのうち慣れる」のだという。勤務は1日8時間。3交代制の24時間営業だ。基本給に歩合給がプラスされ、月収は10万円前後というところ。檳榔は売っても、体は売らない販売促進員なのだ。
 20歳を過ぎれば“長老”と呼ばれるほど、平均年齢は低い。路頭に迷った家出娘から、家計を助けるため働きに出た孝行娘まで、この職に就いた事情はさまざまだ。中には店の面接に、母親同伴で現れた例もあるというから驚く。
 人権団体からは女性蔑視(べっし)と批判され、行政も公序良俗に反すると幾度か規制に乗り出してはいる。が、なくなる気配はない。ある調査によると、「檳榔西施」を“まっとうな職業”と見る若者は、8割に迫るのだそうだ。
(渡辺ゆきこ、本紙嘱託・沖縄大学助教授)